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Last Update:2012/6/13
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第213回 フォックスコン成都工場で争議?

(2012年6月13日)

  日本の新聞などのニュースで6月4日にフォックスコン成都工場で従業員が暴動を起こしたということが伝えられた。鴻海精密工業有限公司(Hon Hai Precision Industry Co,. 別称;富士康科技集団=フォックスコン=Foxconn)は、ipadの生産委託先企業として有名だが、低賃金、残業手当未払い、および悪労働環境などの改善を求めて、労働者による大規模な争議行為があったことでも有名だ。
  今回の事件についても一部では、労働者が賃上げおよび待遇改善を要求して争議を起こしたと伝えられている。
  しかし、6月8日付けのChina Dailyは、事件について、以下のように伝えている。
  「地方政府は、フォックスコン成都工場で発生した暴動は、労働者が賃上げおよび待遇改善を要求したものであるということを否定した。
  暴動は、以下の経緯で発生した。7人の労働者が社員寮の近くの小さな食堂で22時半頃に夕食をとっていたが、酔っぱらった労働者が食堂のものを壊し始め、これに困惑した経営者である老夫婦が警察に通報した。これに気づいた労働者が “警官に殴られた”と寮に逃げ込んだところ、寮内で100人余の労働者が騒ぎ出し、寮の施設を壊し始めた。
  その後、警察が来て問題の労働者4人を連行したが、けが人は出なかった。
  香港の“明報”は、約1,000人が暴動に加わり、大勢が負傷し、10人が逮捕されたと報じ、事件は、賃金および寮の管理に対する不満が原因であるとしている。この報道によると、暴動は21時半から23時まで続いたという。寮の管理人と警備員が、窃盗犯がいると寮内を調査し始めたが、彼らが横暴であったので、労働者が激怒し、警備員を寮から引きずり出すというような行為をし、一部の労働者が設備を破壊する行為を行ったと伝えている。
  しかし、フォックスコンのスポークスマンは、この事件は、フォックスコンの関連工場で数人の労働者が起こしたものであり、フォックスコン成都工場の事件ではなく、成都工場の問題も、事実は外の食堂で酔っぱらった労働者が起こし事件であると噂を否定した。」(以上、要約)
  6月7日付けの四川新聞もChina Dailyと同様の報道振りをしている。筆者は、当事者ではなく、直接目にした訳でもないので、明報の報道が正しいのか、China Dailyの報道が正しいのかは、分からない。 
  それでもChina Dailyがこのような報道をしたということは、少なくとも中国政府および四川省政府としては、事を荒立てたくないという意向があるものと考える。この事件に触発されて、再び各地・各工場で争議が発生することは避けたいという考えがあるのではないか。また、仮に労働者の争議行為を適法なものとして認めるにしても、地方の工会が関与しないかたちで、正式な手続きもなされることなく発生する争議は認めたくないという意識も働いているものと考える。

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