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LastupDate:2004/8/25
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コラム、『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第22回 裁判による紛争処理の信頼性――関係学に注意

(2004年8月25日執筆)



    中国において紛争が生じた場合、どのように処理すればよいのか。法的紛争処理ということであれば、すぐに想起するのが裁判であろう。なぜなら、裁判は、公正、公平であるとの認識があるからである。
  しかし、この点について諸外国の法学者、実務家、外国企業から疑問が呈されることが多い。実務上、公正、公平な裁判が行なわれていないという。なぜなら、中国においては「Guanxi(関係)」が重要視され、この関係の有無や緊密度によって、判断がされることが多いといえそうだからである。「Guanxi(関係)」とは、簡単に言えば人脈、コネクションのことである。
  この認識は、中国国内の関係者にも存在する。2004年8月18日に北京市高級人民法院は、下級裁判所に対して、裁判官が訴訟当事者および弁護士との不当な関係により、判決を下すことを厳格に禁止し、違反した場合には直ちに解任するとの規定を発布した(『China Daily』2004年8月19日)。  この規定は、以下の6項目からなる。
  1. 裁判官は、訴訟当事者および弁護士との金銭関係(食事を共にする行為を含む。)によって判決を下してはならい。
  2. 裁判官、判決を下す前に訴訟当事者および弁護士に審議内容を明らかにしてはならない。
  3. 裁判官は、訴訟当事者または弁護士と親戚、友人、同級生、師弟関係などがある場合には、回避(自発的に当該事件の担当から退く。)しなければならない。
  4. 裁判官は、訴訟当事者または弁護士といかに業務にかかわりない活動(例えば、旅行やパーティ)であっても行動を共にしてはならない。
  5. 裁判官は、訴訟当事者に弁護士を紹介し、および弁護士に訴訟事件を紹介してはならない。
  6. 裁判官は、訴訟当事者および弁護士と私的に面会してはならない。
 以上のような規定は、何も新しいものではない(このような「関係」が問題視された事件に例えば、寧夏カシミア事件がある。Bersani, Enforcement of Arbitration Awards in China, 19 CBR, May-June 1992, at6-10)。1990年代の初めにも最高人民法院による同様の規定(通達)が発布されている。しかし、今日でも上記のような規定が発布されるということは、相変わらず「Guanxi(関係)」がなくなっていないということである。
   中国における裁判上の問題は、いつになったら浄化されるのだろうか。裁判によらない紛争解決手段はあるのか。対中ビジネスを行なう日本企業は、これらの点について検討することが必要であろう(参考文献に拙著『中国における国際商事仲裁の実務』(2004年4月、中央経済社)がある。)。



次号の更新は9月8日(水)ころを予定しています。

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