コラムに関する感想
お問い合わせ
Last Update:2012/10/24
トップチャイナウォール
コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第222回 経済統計の数値に疑問

(2012年10月24日)

  温家宝総理は、2012年10月17日に国務院常務委員会会議で第3・四半期の経済情勢について報告した。これによると、GDP成長率は7.7%で年初に定めた目標の範囲内であると言う。温は、(1)経済成長は安定し、9月の成長は随分と伸びており、消費者心理も改善し、(2)経済構造調整が進展し、(3)就業も安定し、市民の収入も増えていると言う。
  10月18日の国家統計局の発表では、7.4%であった。この数字は、2009年以来の最低成長率であり、7・四半期連続の低下である(それでも一般的には非常に高い成長率を維持していると考えるが。)。中国のGDPに占める消費の割合は2002年に44%であったのが、2011年には34%に低下している。先進資本主義国が70%程度を占めているのに比べ、著しく低い。内需拡大が要請される理由である。
  さらに、これらの数字は多分に水増しされているのではないか分析する者も少なくない。次期総理と目される李克強は、かつて遼寧省の党書記として米国を訪問した時に中国のGDPは人為的な数字であると述べたことがある(Wall Street Journal, 2012年10月18日)。電力消費量、鉄道の貨物輸送量および銀行融資残高の3指標を見た場合、政府発表ほどの成長率は考えられないと主張した。
  では、現在のこの3指標はどうか。電力消費量は、9月に2.9%増でしかない。鉄道貨物輸送量は、6〜8月の3ヵ月間に対前年同期比マイナスである。銀行に新規融資増加額も市場予測を下回っている。9月のインフレ率が1.9%と低かったのも経済成長が低迷していることの現れである。
  1958年に毛沢東が押し進めた大躍進が行き詰まった。この原因の一つとして、食糧大増産が幹部による故意の水増しにあった。報告では大増産の筈が実際には40%も少なかったという。なぜか。幹部の質が著しく低下し、自らの出世主義、官僚主義のためにウソの報告をしたからであった。
  今日も同様の問題がありそうだ。ある幹部は、国のGDP成長率目標が8%であるときには、県レベルの成長率目標は10%とされるという(経済参考報 2009年10月23日)。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002-2011 OBC-China Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はOBC-Chinaの商標です。
s