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(2012年11月14日)
九三学社の調査によると、2010年の所得格差は23倍であった。現在はどうなのだろうか。さらに拡大していると懸念される。所得分配制度は、依然として不健全であると指摘されている。 こうした中、温家宝首相は、2012年10月17日に国務院常務会議で、12月までに所得分配改革案を策定するように支持した。2004年以来、この問題に取り組んできた中国であるが、この8年間に所得分配改革案は草案さえも公表されることはなかった。 それだけ公正、公平な所得分配を行うのが難しいということである。所得格差がなぜ存在するのか。なぜ、格差がかくも拡大したのか。指摘される問題は、(1)所得のGDPに占める割合が低く、(2)多くの灰色収入があり、(3)政府の独占企業の収入のみが非常に大きいという問題である。 (1)2011年の全国の従業員の総所得はGDPの33%であった。さらに、社会科学院の調査によると、1990年から2005年の労働者の報酬がGDPに占める割合は53.4%から41.4%に減少してきている。 (2)国家統計局の統計によると、賃金以外の灰色収入は従業員の全収入の30%以上になるという。公有企業には、帳簿外の資金「小金庫」があることが良く知られている。また、国家発展改革委員会の張平・主任(大臣)によると謝金、心付け、出張費、リベートなど各種名目の灰色収入があり、これらは管理不能だという(人民日報 2012年10月25日)。 「三公消費」という言葉がある。公務員には、@公費による海外出張、A公費による飲食、B公用車の私用があるということを表す言葉である。この「三公消費」は、少なくとも給与の3倍以上あると言われる。全国の公務員の所定の給与にさらにこの3倍以上の金額が国庫から支出されているとすれば、一体どれだけの人件費がかかっていることになるのだろうか。 (3)政府独占企業の所得は著しく高い。人力資源・社会保障部の労働賃金研究所が発布した「中国報酬発展報告(2011年)」によると企業幹部と農民の賃金所得差は、4553倍にもなる。公務員の職務消費は、1978年から2005年までの28年間に140倍になった。単年度の財政収入に対して、公務消費は1978年に4%であったのが、2005年には24%になっている。市民が税金で公務員の報酬および「三公消費」を負担しているということである。 一体どうやってこのような所得分配を公平にするのだろうか。賃金条例の制定が検討されているようだが、上述の問題解決に対する意義はなさそうである。根本的解決には、経済体制改革と政治体制改革が必要であろう。しかし、現在の為政者でこの問題に手をつけよう、改革しようという者がいるか。「官を以て貴しとなす」「官僚として出世し、財を成す」ために公務員になろうとする者ばかりである。国家公務員試験は、恐ろしく狭い門だった。「官」=「党」ということも言えるのだろうか。国難は、まだまだなくなりそうにない。
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