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Last Update:2012/11/28
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第224回 中国経済の憂慮の一「国有企業改革」〜 国家公務員試験から窺知できること

(2012年11月28日)

  中国の経済成長が確保され、真に国際競争に耐え得るようになるためには、国有企業改革が不可欠であると認識されている。国有企業を改革して、公正・公平な競争のできる市場環境を構築することが果たしてできるであろうか。この点に関しては、厳しい見方をせざるを得ない。
  国有企業改革の本質は何かと問えば、政府の改革ということになるのではないだろうか。国有企業は、実際上は政府による経営がなされ、市場における行政独占が蔓延っている。政府プロジェクトの元請け企業は、入札制度が始まっても実質的には、何れも国有企業であると言って良い。これを改革する力量および意志が、現在の共産党および政府にあるだろか。また、こうした慣行を改めようとする優秀な若者が育っているだろうか。今年(2012年)11月の国家公務員試験の動向、受験生の意識からもこうした懸念が生まれる。
  11月24日に2013年度国家公務員試験が実施された。約2万の職位に対して、150万人が受験した。競争率は66倍であったという。2002年の受験者数は僅か6万3,000人であったのが、2010年には100万人を突破した。1990年代から2000年初頃までは、「下海」という言葉がはやり、優秀な人材が国家公務員から外資企業や民間企業に流出するという現象が起きていた。これが今、再び逆転している。何がそうさせるのか。
  欧米系外資企業の給与待遇が国家公務員より悪いということはない。むしろ高給で迎えられる。しかし、毎朝必ず9時に出勤し、毎日残業があり、仕事上のプレッシャーも相当なものがある。これに比べれば、給与はそれほどに高くなくても比較的にのんびりし、プレッシャーのない仕事の方が良いという考えが、今の多くの若者を支配している。
  独立研究機関の麦可思研究院(My China Occupational Skills, MyCOS)が、2012年3月に仕事に対する満足度についてアンケート調査したところ、次の通りの結果が得られた(http://www.chinadaily.com.cn/digestchina 「中国年轻人, 为何挤国考 Test the way to your future in government」)。全国2000の大学の25万人の卒業生に聞いたところ、政府機関に就職した者の満足度が、国有企業、外資企業、民間企業を上回って最も高かった。政府機関は非常に狭い門であるとすれば、国有企業が次に来る。学力は高くても安定志向の学生が来るだけであると、企業家または起業家となれるような人材が不足するという問題も指摘されている。
  上述した通り、市場において公正・公平な競争をする環境を形成しなければならない。この場合、国有企業に優先的に回している生産資材、土地やエネルギー資源などを民間企業と対等な関係、競争の中で確保するようにしなければならない。政府は、民間企業に国有企業と同じ機会を与えるようにしなければならない。そうであるので国有企業改革は、政府改革と一体化させて行わなければならない。政府の意識改革が必須である。

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