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(2012年12月12日)
2012年12月2日の中央テレビ「毎週の品質レポート」は、武漢市の1万台のシトロエン(神龍汽車公司)の新エリーゼ(新愛麗)タクシーに重大な品質問題があると報じた。 これは、武漢市のタクシー運転手による中央テレビへの投書がきっかけであった。投書によるとブレーキの効きが非常に悪く追突事故が頻発しているという。 運転手によると武漢市は2011年4月からタクシーを買換え始め、2012年3月にピークになったという。ところが2011年4月から2012年9月の間にタクシーの事故発生率は90%になり、最高時には130%にも達したという。これは武漢市の保険会社4社のタクシー事故による保険支払い業務統計から明らかになった数字である。 この原因はどこにあるのか。シトロエンの新エリーゼの事故発生率が著しく高く、ここに問題の所在があるようだという。武漢市が導入した車種は、新エリーゼの中の最低グレードのもので、ABSアンチロック・ブレーキ・システムも電子制御制動力配分装置もなく、ボディーも強度が減らされ、ブレーキ・ブースターも通常のものよりも小さく弱いものであった。 2012年4月時点で武漢市のタクシー数は1万5,000台で、うち1万2,655台が新エリーゼであるという。 問題は、この車種の品質だけではない。同じ新エリーゼは、個人タクシーの資格を有する者がシトロエンから直接購入する場合には6.2万元/台である。ところが、(1)タクシー会社と請負契約を結ぶ運転手は、同じ新エリーゼについてタクシー会社から12〜15万元/台で払下げを受け、かつタクシー会社に毎月5,000〜7,000元の請負ノルマとしての上納金を支払わなければならない。また、(2)タクシー会社は、武漢市客運タクシー管理所から約10万元/台で車を購入する。そうであるのに、(3)武漢市客運タクシー管理所は、シトロエンから6.2万元/台で新エリーゼを統一購入しているのである。そこで、およそ4万元/台はどこへ消えたのかという問題が生じている。 中国の報道では、客運タクシー管理所だけでなく、シトロエン、自動車検査場、その他の武漢市政府もこの問題に係っている筈であると取りざたされている。 習近平新指導部は、反腐敗運動を堅持すると発言している。最近、党規律検査委員会が、今般の党大会で中央委員候補に選ばれた李春城・四川省党委員会副書記を規律違反の疑いで拘束し、取り調べを始めたということが伝えられた。 武漢市シトロエンの新エリーゼ・タクシー事件は、反腐敗により党を立て直し、改革する政府の行動の幕開けなるのではないかと期待する報道もある。そうなることを期待したいが、この事件はまだ全体に比べれば規模が小さい。あまりにも腐敗が多すぎ、手が回らないということもあるのだろうか。比較的小さな腐敗のみを取り上げ、大きな腐敗を隠そうという意図も働かせようとする体質もありはしないだろうか気にかかる。
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