コラムに関する感想
お問い合わせ
Last Update:2012/12/26
トップチャイナウォール
コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第226回 反腐敗、賄賂撲滅の強化が必要

(2012年12月26日)

  共産党第18回大会は、中国のGDPおよび市民の収入を2020年までに2010年比倍増するという目標を掲げた。賃金収入の少ない低所得者層に希望を持たせたが、富める者のみを富ませるのではないかという不安が強い。
  西南財経大学が行った家庭金融調査報告書によると2010年のジニ係数は0.61と世界の平均値0.44を大幅に上回っている。この事実は、中国の家庭収入の格差が大きいことを証明するものである。
  国家統計局が発表した資金流量に占める労働報酬の比率は、2000年の55.3%から2010年には47.8%に減少している。これは、賃金収入が減っているということであり、この10年間で都市と農村、地区間、業種間の収入格差が拡大していることの証左でもある(新華網 2012年12月21日)。
  山東省の中学校教師は、「14年前に内蒙古の教員であった時には基本給のほかに福利厚生手当、住宅手当などを含めて合計1,000元程度の収入であった。山東省に着任して賃金は3,000元になったが、物価上昇、各種支出増で生活は苦しくなっている。子供の就学前教育費500元、老人扶養費600元、生活費1,000元、不動産賃借料1,000元がかかり、妻のパート収入1,200元がなければやって行けない。」という。
  一般市民がこのように切り詰めた生活が強いられているのに共産党幹部や公務員の腐敗は絶えない。「反腐敗ブルーペーパー(2012年版)」(反腐倡廉藍皮書)が2012年12月19日に発表された。中国社会科学院中国廉政研究センターが2011年12月から2012年6月までの間に8省・市を訪問し、聴き取り調査を行ったものである。調査には、「毎週の公費による飲食回数」、「金品の贈収回数」、「1年間の予算外支出」などについても調査されたという。
  2011年に全国規律検査監察機関は、134万5814件の告発を受け、13万7859件を立件し、13万6679件について結審し、14万2893人を処分したという。うち、県以上の幹部は4843人で、司法機関に移送された県級幹部は777人であった。
  全国の衛生関係部門では169件の賄賂事件について処分され、この事件の金額は4231万7600元、289人が行政処罰され、75人は刑事罰が科せられた。
  このような贈収賄を取り締まるために中央規律検査委員会は、この5年間で単独または関係部門と共同で約50の法規を制定し、各省市区は約500の法規を制定している。2012年には、国有企業指導者が清廉業務執行規定に反する行為をした場合や違法な手当を支給した場合に「中国共産党規律処分条例」を適用するという規定を制定するなどの法整備を行っている。それでもなお、こうした対策が機能していない。さらに厳密な法整備が必要であり、懲罰規定も定めなければならないようである。
  市民の賃金性収入が減っているのも、このような賃金外収入、脱法収入が蔓延っていることとも関係がある。賃金外収入がある官僚や企業幹部は、一般従業員の賃上げに熱心にはならないからである。最近、中国の法律事務所には、外資系企業を含めて商業賄賂対策に関する社内規定、制度構築に関する依頼が多いという。2013年は商業賄賂の問題が大きなテーマとなる。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002-2011 OBC-China Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はOBC-Chinaの商標です。
s