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(2013年01月23日)
中国国家統計局は、2013年1月18日に2012年のGDP成長率が7.8%であると発表した。成長率が8%を下回ったのは13年振りとなる。決して低い成長率ではないが、中国経済が直面している課題を考えたとき、成長モデルの転換期が差し迫っていると言える。 中国の経済成長は、インフラ投資および輸出に支えられてきた。今、この限界に来ている。消費・内需拡大モデルに転換する必要がある。 さらに中国が経済成長を維持しようとする場合の大きな難題がある。それは、労働力の縮小という問題である。中国社会科学院人口与労動経済研究所の蔡ム所長は、中国の労働力人口は2030年に16億人達し、この時点で静止人口(これ以降は、人口増は横ばいか減少する。)になると予測している(2025年に14億人に達しこれがピークという上海社会科学院の左学金副院長の推計や2040年に16億人位達するというOECDの推計など様々ある。)。日本は2002年に静止人口になり、経済成長は著しく鈍化した。 このとき、中国が老齢化社会、老齢社会に突入するという問題もある。老齢化社会(aging society)とは、65歳以上の人口が全人口の7%以上になることをいい、老齢社会(aged society)とは、65歳以上の人口が全人口の14%以上になることをいう。日本は今、総人口の12%が65際以上となっているが、上海も既に12%に達している。 「機会の窓」(Window of Opportunity)という言葉がある。これは、満15歳から64歳の生産年齢人口の全人口に占める割合が相対的に低く、満0歳から14歳の子供の割合が30%以下で、かつ満65歳以上の高齢者の割合が15%以下であるとき、社会経済開発に有利な時期にあるということである。 アメリカの国際情報会議(NIC)が発表した「グローバルトレンド2030」によると(http://gt2030.com)、中国がこの機会の窓のメリットを享受できるのは、1990年から2025年の間である。2010年の中心的世代が35歳だが、2030年には43歳になっている。 日本は、1965年から1995年に機会の窓であったというが、日本の高度成長期が1954年12月から1973年の間だったことを考えると、機会の窓の期間と実際の高度経済成長期には若干ずれがあり、そうであると中国が機会の窓を享受して経済成長を達成できる時期はもう少し手前にずれ込みそうである(小島麗逸大東文化大学名誉教授は、2023年に機会の窓の終わりが来ると推計している。)。すなわち、今後10年くらいは中国政府の目論みに近い経済成長は遂げられても、それ以降は停滞すると考えられる。 中国共産党、政府の「中国の夢」は、偉大な中華民族を復興させることであるという。すでにGDPは世界で2位となり、2030年には米国を抜き1位になる。「中国の夢」は、達成されているのではないか。市民の「中国の夢」は、何か。共産党および政府の夢と同じなのか。市民にとって偉大な中華民族の復興とは、「貧富の格差が大きく、共産党および政府官僚による腐敗が蔓延し、PM2.5で覆われて太陽が見えない社会」ではないだろう。
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