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Last Update:2013/02/13
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第229回 農民工を犠牲にした都市化の推進

(2013年02月13日)

  春節を間近に農民工が帰省し始めている。広東省は、2011年末時点で労働力需要が対前年比15.2%増え、常時40万人の労働力が不足しているというが、広東人力資源与社会保障局の試算によると、春節で100万人から120万人の労働力が不足するという(China Daily, 2013年2月1日)。
  広東省から100万人の農民工が帰省、この人数は農民工の61%に相当する。この帰省する農民工のうち10%は、広東省には戻らないという。
  広東省では2013年の最低賃金は10%引き上げられ、1300元程度になりそうだ。4500元の月給を支払っている企業でも、10%の賃上げを契約しているところがある。
  それでもなぜ農民工は再び広東省または沿海都市での就労を嫌うのか。内陸都市でも賃金が上昇しているということもあるが、最大の問題は政府が農民工の権利を等閑にしているからである。
  すなわち、労働待遇が改善されず、社会保障が付与されず、医療の補助なされず、農民工の子女が教育を受ける機会も与えられず、かつ広東省等沿海都市の生活費、物価が高いという問題がある。
  Tom Millerは、最近“China’s Urban Billion:The Story Behind the Biggest Migration in Human History”を出版したが、この中で2.5億人の農民工が都市において二等市民として遇されていると指摘している。2030年には都市部の二等市民(下層市民)は5億人に増えると予測する。
  温家宝国務院総理は、2013年1月中旬に国家発展改革委員会の会議の席上、農民の利益を犠牲にして都市化を進めることはできないと発言した。農村、農民を犠牲にした経済発展モデルととってきた本人が今更発言することではなさそうな気がする。
  農民工の社会保障費等を都市が負担するようになれば、このコストは年間で1兆5000億元、GDPの3.8%になるという(Tom Miller)。だから、政府は最低賃金の引上げをし、さらに企業が賃金を上げ、福利厚生待遇を引き上げるように要請し、誘導してきた。
  しかし、こうした問題を企業の責務に委ねることはもはやできない。社会が負担するようにすべきであり、直接的には政府が適切な社会保障政策を策定する必要がある。これが、政府の責務である。

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