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(2013年03月27日)
中国の都市化率は、2011年末に51.27%であったと発表されている。この都市化率は、先進資本主義国と比較しても劣るものではないが、工業化がこれに追いついていないのではないかという疑問がある。 都市化率のみが高くなっていることから生じている弊害として、(1)所得格差の拡大および貧困の未解消、(2)工業化の遅れという二大問題が存在する(中国の都市化は、「土地の都市化」であり、工業化の結果ではないということに問題があるのだが。)。 第一に、所得格差の拡大および貧困の未解消ということに関しては、次の通りの問題が指摘できる。 生活水準が向上しており、1人当たりGDPが高くなっているとはいわれるが、西南財経大学と中国人民銀行金融研究所が共同で設立した中国金融調査センターが実施した調査によると、2010年のジニ係数は0.61であった。これは、中国政府の公式統計0.474よりも遥かに高い数値である。 所得格差の拡大も放置できない。中国の上位10%の高所得者層が全国の総家庭収入の57%を占めている。中国の上位5%の高所得者層をとってみても、全国の総家庭収入の44%を占めるという数字になる。米国は先進資本主義国に中でも所得格差が大きい国であるが、米国でさえも上位10%の高所得者層の全国の総家庭収入に占める割合は40%である。如何に中国における所得格差が大きいが分かるだろう。一見、1人当たりGDPが増えているが、高所得者層に牽引されているということがあり、底上げが不可欠である。 現時点で、都市と農村の格差が拡大しており、都市においても「貧窮二世」が都市人口の20%を占めるという状況もある。 第二に、工業化の遅れということに関しては、次の通りの問題が指摘できる。 企業の生産過剰および生産効率の低さも指摘されている。これらの問題に取り組む必要がある。 周近平は鉄鋼、レアアース、セメント、石炭・化学、板ガラス、造船、風力発電設備、シリコンの8大分野の生産過剰が際立つと発言している。そこで、中国政府は、2013年1月22日に自動車、鉄鋼、造船、アルミ、セメントの5業種について、2015年内に10社に集約させるという目標を発表した。しかし、国家統計局の発表によると鉄鋼生産が前年同期比4.6%増、1月比14.2%増、セメント生産が前年同期比4.8%増、1月比10.8%増と生産量が大きいことは、不動産投資に多くが費やされていることの証である。環境汚染の拡大という問題とも関連してくる。 国有企業改革が進まず、このために市場における自由競争環境が整備されないので、一部の巨大化している民間企業はあるものの中小の民間企業の設立が期待するほど増えていない。 中国は、都市化を推進することで工業化および経済成長を図るとしているが、このような成長モデルが適当であろうか。都市化自体により工業化が進み、経済成長がもたらされる訳ではないことを認識する必要がある。
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