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Last Update:2013/04/10
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第233回 脆弱化が進む共産党の基盤

(2013年04月10日)

  習近平、李克強ら新指導部の「中国の夢」は、「強国富民」ということであろう。しかし、これは共産党の望みである。市民の描く「中国の夢」は、異なるのではないだろか。国家や中華民族の復興というよりも、経済面で平等に豊かになり、経済・社会の自由を確保できるようになることではないか。
  市民の自由を求める声が強くなり、個人主義の意識が強くなりつつある。そこで、これを抑制することが共産党政権の重要な課題となっているようだ。
  この場合の対策として常に考えられることは、敵対する存在を作り出すことである。中華人民共和国成立前の中国人の夢は、アヘン戦争以来の帝国主義を打倒し、敵を討つことであった。このために国民が一致団結した。このような意識を取り戻すために、または少なくともこのような意識を思い起こさせようと、排他的な政策がありそうな気がする。
  最近、アップルの中国におけるサービスは他国に比べて悪いことが問題視され、大きく取り上げられた。iPhoneに不具合があると、他国では新品に交換することが一般に見られるところ、中国では部品交換で対応されるということが批判にさらされた。
  日本ではあまり報道されていないようだが、今、多くの外資がアップルと同様の圧力を受けている。
  中央テレビで、フォルクスワーゲン車でドライバーの運転操作に反する加減速が起きるということが報道され、フォルクスワーゲン・グループは、38万台の車をリコールすると発表した。同社の損失は6.18億ドルにのぼる。ケンタッキーで有名なヤム・ブランズ、やマクドナルドは、抗生物質を混ぜ成長を速めた鶏肉を業者から購入しているという報道がなされ、売上げが急減した。ヤム・ブランズは、全世界の売上げ136億ドルの半分を中国で稼いでいる。中国における評判が経営、利益に大きく左右する状況になっている。コカコーラも殺菌剤を含んだ製品を販売していると中央テレビで報道された。デマに中央テレビが加担したと言われている。 3月15日の「世界消費者権利デー」のキャンペーンということの影響もあるといわれる。中国においては、消費者権益保護法が1994年1月1日から施行されており、消費者の権利意識も高まっているということも確かにあるだろう。
  ただ、共産党政権の意識としてはどうか。2012年の中国の乗用車の販売台数のうちGMが30%、フォルクスワーゲンが28%を占めている(Wall Street Journal 2013年4月5日)。習近平は、国内ブランドを形成したいということを述べており、こうしたことも背景にはあるだろうか。
  さらには、民族意識を高揚させたいという思いがある。そして、それ以上に、個人主義に向かいがちな市民を共産党政権のもとに一致団結させたいという意識がある。外国企業を誹謗中傷し、外に敵を作ることで共産党の基盤を強化したいということではないだろか。外資に対する圧力を強めているのは、共産党の基盤が脆弱化していることの証左である。   

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