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Last Update:2013/04/24
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第234回 中国人のブランド・イメージと企業の事業戦略

(2013年04月24日)

  中国人の海外旅行が増えている。中国人旅行者の海外で消費する金額も著しく伸びている。とりわけ外国ブランドの購入が多く、消費財を生産する企業にとっては、重要な顧客となっている。中国人旅行者が海外で購入する製品は、高額な有名ブランドである。中国人は、どのようなブランドを好み、それは何故なのか。中国人顧客を囲い込み、将来的に中国市場に事業展開する上で、このことを理解することが重要な企業戦略になる。最近の傾向について見てみたい。
  世界観光機関によると、2012年の中国人海外旅行者数は延べ8,300万人と10年前の8倍になり、中国人が海外で支出した金額は1,020億ドル(2011年比40%増)と世界1位になったという。
  2012年に日本を訪れた中国人旅行者が日本で消費した金額はおよそ2,688億円と推計され、国・地域別で1位だった(日本の観光庁の発表)。トップの中国が全体の25%を占めており、1人当たりの消費額について見ても中国は18万8,000円で、1位オーストラリアの19万7,000円に次ぐ2位だった。
  中国公安部のデータによると中国人でパスポートを持っている人は3%しかいない。しかし、3%でも4,000万人という数字になる。将来、中国人の10%がパスポートを持つようになれば、日本の人口数になる。
  中国人は、奢侈品の3分の2は海外で購入する。海外消費の伸びは、国内消費の伸びを上回っている。プラダ、スウォッチ、ヘンダリーは、それぞれ33%、41%、63%の顧客が中国人であるという。高級品志向があると考えられる。コーチ(Coach)は、中間所得層の商品と見られ、嫌われているようである。中国人海外観光客には、中国で多く見られるブランドも嫌われがちである。例えば、ルイビトンは「先発劣勢」であるといわれる。バーバリー、グッチ、エルメスも同様の理由で中国人顧客が購入する割合は少ないという。
  さて、日本のレナウンは、2010年5月24日の取締役会において、山東如意科技集団有限公司(山東如意)との間の資本業務提携契約の締結に関する決議をした。この提携は、山東如意にとって以下のメリットがあると考えられていた。
  中国は紡績・アパレル大国だが、強国ではない。中国全体で見れば研究開発や技術力、ブランド力、消費者の高級化志向への対応などの面で課題がある。レナウンは日本で100年以上の歴史を誇り、デザインや商品・販売管理の人材とノウハウ、多くの店舗網を持つ。山東如意はファッション企業への転換を図るうえでレナウンの有力アパレルとしてのリソースが必要だった。
  そこで、山東如意の支援の下、レナウンの展開するブランドを中国において展開することになった。しかし、レナウンは、日本においては高級ブランドのメーカーとして認知されているが、中国での知名度はなかった。このため、レナウンのブランド商品を中国で販売展開して行こうとしても、必ずしも予期した効果が発揮できなかった。
  こうしたことから、レナウンは、2013年4月12日、山東如意の親会社である済寧如意投資有限公司および山東如意との間の資本業務提携契約の締結並びに済寧如意に対する第三者割当による新株式発行を決議した。山東如意は、レナウンへのグループの出資比率を現在の41%から5割強に引き上げる。
  レナウンは、この増資によって既存ブランドの強化により同社がこれまで培ってきた主力販路である百貨店における売り上げを維持しつつ、日本国内におけるショッピングセンターその他の商業施設などへの販路拡大並びに小売事業の拡大を図る。
  これにより日本国内で高級ブランドとしての評価をより一層高め、中国人に知られるようにすることが、中国国内でレナウン・ブランドを展開する以前に必要であると如意が判断したようである。こうした戦略の方が、中国人のブランドに対するイメージに適っているようである。  

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