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(2013年05月22日)
2012年末時点のネット利用者数は、5億6400万人だった。中国共産党および政府は、いかにしてネットをうまく利用し、または規制するのか悩ましい。 中国高官や著名人の腐敗はひどい状態である。しかし、党および政府は、身内に甘く、取締りをしようとしない。そこで、市民がネットで告発し、これに対してやっと腰を上げるという行為が行われている。 例えば、重慶市北碚区党委書記だった雷政富が愛人と一緒にいる映像が告発サイトで公開され、解任されるに至ったことなどがある。また、中国映画界の巨匠、チャン・イーモウ(張芸謀)監督が一人っ子政策に違反し、7人の子どもをもうけたとの疑いがネット上の暴露され、政府当局が調査を始めた。中国各紙は「1億6,000万元の罰金が科される可能性がある。」と報じている(東京新聞2013年5月11日)。 習近平は、「共産党員の腐敗問題が深刻になれば、最終的には党と国が滅ぶ。」と言い、腐敗撲滅キャンペーンを始めたが、これは多分に文字通り一時的なキャンペーンであり、ポーズで終わろうとしている。 複数の香港紙は、中国当局が北京や上海などの大学の教員に対し、@自由や人権といった普遍的な価値、A報道の自由、B公民社会、C公民の権利、D共産党の歴史上の誤り、E司法の独立、F権貴資産階級(癒着により富や権利を蓄えている新たな社会階層)の7項目について授業で語ってはならないとの指示を出したと伝えている(日本経済新聞 2013年5月12日)。 全国人民代表大会は、2013年3月に「ネット情報保護強化に関する決定」を発布した。この決定は、ウェブサイト運営者に捜査協力を義務付けたほか、広告や嫌がらせなどの迷惑な電子メールの一方的な送信に罰則を設け、社会秩序の維持を名目として規制し、ネットを通じた詐欺やデマの流布などを厳しく取り締まるとしたものである。規制の判断基準は曖昧で、政府の恣意的な判断で、告発者ら個人を取り締まるということが優先されそうである。 このとき市民はどう対処しようとするのか。他の手段を探し、見つけ始めている。 米ホワイトハウスは、2011年に市民からの嘆願を受け付けるサイトを開設したが、今、ここに中国人から中国国内で起きた事件などに関する捜査嘆願が寄せられているという(日本経済新聞 2013年5月10日)。1995年の清華大学中毒事件がある。同校の学生朱令が、中毒で重い障害を負った。容疑者はルームメートだが、元政府高官の孫娘だったため捜査はなされなかった。そこで、ネットユーザーが、18年経った今、ホワイトハウスの嘆願サイトができたことに目を付けて告発した。このサイトでは、1カ月以内に10万人以上の署名を集めた嘆願は米政府が受理し、対応策を発表しなければならない。朱さんの事件では、申請から5日間に13万5,000人以上の署名が集まったという。 党および政府は、表現の自由を市民の権利として認めることから始めなければならないのではないか。
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