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Last Update:2013/06/26
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第238回 労働紛争は増加傾向

(2013年06月26日)

  最近、日本では余り報道されていないようだが、相変わらず労働紛争・争議が存在し、さらに増える傾向が見られる。
  北京市海淀法院が公表した統計によると、2012年に同法院が受理した労働紛争件数は3,000件余であったが、2013年は1〜4月だけですでに2,234件の労働紛争を受理しており、爆発的に増えている(華夏時報 2013年5月22日)。
  法院に労働紛争を提訴するのは、2008年以前は単純な賃上げを含む労働報酬に関するものが80〜90%を占めていた。しかし、最近では紛争内容が多様化してきている。すなわち、書面による労働契約の未締結、有給休暇、残業代、社会保険などの事案が増えている。
  法院への提訴は、最終手段である。労働紛争が発生した場合には、はじめに(1)企業内の労働紛争調停委員会で調停を行い、これが不調の場合に(2)地域に設置されている労働紛争仲裁委員会に仲裁を申し立て、ここで示された仲裁判断にも不服である場合に、最終的に(3)法院に申し立てる。このような紛争処理のプロセスがあるところ、上述の統計は法院が受理した件数だけなので、法院にまで持ち込まれない労働紛争は遥かに多く存在すると考える。過去のデータから推察すると、労働紛争仲裁委員会の受理件数は、法院の受理件数の2倍ある。
  上述した労働紛争は、個別労働紛争が多く、集団紛争でも30人以下のものが多いと考えられる。ところが、最近の問題は、必ずしも法的な手続がとられることなく、抜打ち的集団争議・ストライキが従来にも増して発生していると思われることである。
  香港の労働団体である中国労工通訊(China Labour Bulletion)は、2013年4月に大陸で201件のストライキを含む労働紛争が発生し、この件数は2012年比2倍であるという。深圳だけで17件発生しているという(Wall Street Journal 2013年6月11日)。201件のストライキを含む労働紛争という表現であるが、これは、会社・工場の一部の職場の労働者によるストライキという類いのものではなく、全社・工場規模のストライキを行っているものと推察される。
  このようなストライキ発生の原因は何か。中国の輸出競争力の弱体化に大きな理由がありそうである。
  これまで中国は、世界の低コスト生産工場として発展してきたが、中国国内の人件費高騰で、外国企業が生産拠点を東南アジアなどの発展途上国に移してきた。このとき、中国製造業は、生産拠点を深圳市からさらに人件費の安い内陸に移転しなければならない。都市であれば、環境コストも随分と支払わなければならなくなってきている。そこで、工場を移転しようとするとき、労働者が転居することを拒否した紛争が発生している。中国がルイスの転換点を迎え、労働力不足になっていることも労働者の権利主張を強めることになっている。  

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