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Last Update:2013/07/10
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第239回 日本買い:中国企業の海外投資、M&Aの狙いは

(2013年07月10日)

  シャープは、2013年6月27日に中国国有企業の中国電子信息産業集団(CEC)に最新の省エネ液晶パネル「IGZO(イグゾー)」の生産技術を約220億円で供与し、この技術料をもってCECとの合弁会社(資本金が175億元(約2800億円)でシャープの出資比率が8%となるということなので、正確には合弁会社ではなく“合作会社”ということか)に出資すると発表した。
  中国は、日本の技術を強く欲している。日本企業の技術を欲することは、中国企業による対日グリーンフィールド投資、企業買収が増えていることにも見られる。
  中国企業による日本企業買収の主たる目的は、日本企業のコア技術の取得、ブランド力の取得にあるといわれている。とりわけコア技術の獲得に熱心である。
  しかし、中国企業は、コア技術が得られればいいのか。単純にコア技術の取得だけが目的であろうか。この設問に対する回答は、否ということになる。コア技術獲得の先にあるものがある。それは、何か。「know why」なのではなかろうか。
  上海上東投資管理公司総経理の黄亜南は、「我々が“日本買い”をする目的は、如何なるコア技術を買うかではない。日本企業を買収するのは、日本企業が我々にさらに多くの価値を創造するからであり、……我々の成長戦略に適うからである。」と言う。黄は、次のことも指摘している。合弁事業を通じて、技術を吸収し、同じ製品を生産できるようになる。しかし、市場の競争は激しく、技術の進歩も急である。今、最新の技術もすぐに寿命を迎える。
  黄の著書『買日本〜中国企業対日併購入新戦略』(東方出版社、2012年)の裏表紙に「“買日本”は中国企業の欠点を補うことができるか?」という言葉が書かれている。中国企業の欠点とは何か。中国企業は外国から技術を導入し、この技術をもって高品質の製品を生産する力をつけてきた。生産のためのノウハウ(know how)も吸収、消化している。しかし、なお足りないものがある。それが、「know why」である。
  「know why」とは、例えば、ある製品および/またはデザインを決定するに至った理由、当該技術が適切であるという結論に至った理由を知ることである。「know why」を分析、検討することで新たな製品開発の概念が生まれ、新技術の創造ができる。日本企業は、この「know why」を持っているが、中国企業にはまだこの力がない。
  中国企業が日本企業を買収する真の狙いは、「know why」の獲得にあり、これを取得して更なる成長戦略を描くことにある。さて、日本企業は、この狙いを認識して、コア技術だけでなく、「know why」についても中国企業に流出しないようにブラックボックスに入れておくか、またはこれを開示して、Win-Winの関係、共同成長戦略を描くか。この戦略を練っておく必要がある。

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