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Last Update:2013/08/14
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第241回 鬼城:ゴーストタウン
〜 都市化による経済再生に黄信号

(2013年08月14日)

  李克強首相は、都市化を推進し、もって経済の再生を図りたい考えのようだ。都市化は、都市人口を増やし、旧来の環境汚染企業を郊外に移転させる圧力となり、サービス業が発展することにもなるといった集積効果があるからである。国家発展改革委員会は、李克強の指示を受け、年内に都市化に関する事業計画を定める予定である。すでに「都市化の健全な発展を促進する計画(2011−2020)」の草案が発表されている。しかし、今この都市化に黄信号が灯っている。
  全国で鬼城(ゴーストタウン)が出現し、問題化しているからである。内モンゴル自治区オルドス市、遼寧省営口市鉄嶺地区、中国河北省唐山市の曹妃甸工業区、江蘇省常州市天誉都市花園などが目立つ存在である。
  河北省唐山市の曹妃甸工業区で総額910億ドルを投じたプロジェクトが債務と未履行問題に陥っている(New York Times 2013年7月25日)。他の都市でも同様の問題がある。プロジェクトは、多くが信用取引によって増幅される投資に依存した結果であるからある。天誉都市花園の事業費は6億元だが、これを支えるのが理財商品である。天誉都市花園に投資する理財商品は、年11%の予想利回りを掲げることで資金を集めた(日本経済新聞 2013年7月5日)。
  2012年の中国のGDPに占める投資の比率は48.1%に拡大している。地方政府が、GDPの盲目的追及をし、過剰なインフラ建設を進め、豪華マンションなどの不必要な不動産開発を行ったためである。IMFは、中国ではGDPの10%ほどを過剰投資していると試算している(New York Times 2013年7月25日)。
  そこで、李克強首相は、最近になって「人の都市化」ということを言うようになっている。農民の土地という財産を如何に保護し、教育や医療などの社会福祉を享受させるようにする必要があるということである。国家発展改革委員会の徐紹史主任(大臣)は、6月29日に全人代常務委員会で都市化建設業務状況に関する報告をしている。この報告で2012年末までに戸籍の都市化率は35.29%でしかなく、人口の都市化が著しく遅れているという指摘がなされている。
  中国社会科学院の何帆は、全国各地に小都市を建設するためにインフラ、不動産に巨大な投資をし、もしこれが失敗したら、多くの負債を生み出し、金融危機を生み出す可能性があると指摘する(Wall Street Journal 2013年5月9日)。
  人の都市化も単に農村人口を都市人口にするというだけでは意味がない。何帆は、これらの資金は大都市に使うのが良く、地下鉄の補修、汚染対策および新住民の社会福祉に使うべきだと言う。今までにおいてもこのような分野に着実な投資をしていた方が、財政も健全であり、GDPの成長にも実際には有効であった筈である。今後、都市化の方途についての見直しが行われることになるだろう。


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