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Last Update:2013/08/28
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第242回 群衆から民衆へ:社会の矛盾を解決する途

(2013年08月28日)

  中国で社会の矛盾が拡大してきていることは周知の通りである。このことを民衆自身が一番実感しているだろう。
  中国共産党も社会の矛盾の拡大に危機感を持ち始めているようだ。中国共産党中央党校の呉忠民教授は、社会の矛盾は、社会の治安面で問題である以上に社会の安定的発展にとってより大きな影響を与える問題となっていると認識する必要があると指摘している(呉忠民「如何認識中国現段階的社会矛盾」光明日報、2013年8月13日)。
  社会の矛盾拡大の原因について、呉は、(1)社会全体の利益構造が大幅に広がったこと、(2)社会の構成員の利益追求意識が非常に強くなっていること、(3)発展が著しく不均衡であることの3点を指摘している。
  では、民衆は具体的に何を期待しているのか。ある社会調査によると中国民衆の最大の関心事項は、そのほとんどが民生問題であるという。この民生問題とは、公共教育、社会保障、公共衛生、住宅、終業および物価などの問題である。そこで、呉は、社会矛盾をなくすために、(1)公正な制度および政策の策定、(2)基本的な民生保障制度の確立、(3)法治建設の推進による社会矛盾の解決制度の確立が必要であると指摘している。
  さて、改革開放以降、中国は、「先富起来」(先に豊かになれる者から豊かになる)という経済発展戦略をとってきた。このことは、「群体」(または群衆)の利益を膨らませてきたのではないか。「群体」とは、“特定の利益集団”と言い換えられるような気がする。しかし、広範な大衆=「民衆」が、同様の利益を享受できたか、または同様の利益を享受する機会を与えられたかというと否である。ここに発展格差、所得格差が生じ、これが拡大して社会の矛盾が大きくなってきたと考えられる。民衆が平等、民主ということの意識に目覚めたということもある。
  民衆の求めるものは、直接的には民生問題であるのは事実だろうが、根本的に求めているのは公正、平等な社会ではないだろうか。少なくとも機会均等な社会であろう。
  胡錦涛は、「社会主義和諧社会(調和のとれた社会)の確立は、中国の特色ある社会主義事業の全過程の長期に及ぶ歴史任務であり、発展の基礎の上に各種の社会矛盾を正しく処理する歴史過程および社会の結果である。」と言っていた。習近平は「中国の夢」ということを言っているが、これは習近平の夢、中国共産党の夢、習近平の取り巻きである群体にとっての夢ということになってはいないか気にかかる。
  中国語で“群体”、“群衆”、“民衆”という言葉が使われている。この意味を聞くとほとんど同じ意味だというのだが、どうもそうは考えられない。前述した通り、“群体”や“群衆”は、主義主張を同じくする者の集団と言えそうである。このような概念が持たれる場合に“群体”や“群衆”という言葉が使われているケースが多い。“民衆”は、広範な市民ということができるだろう。今、中国で民衆のための政策が重要になってきている。


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