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(2013年10月23日)
中国経済体制改革研究会の陳剣副会長は、現在の経済政策・改革の特徴の一つに「新四化」があるという(経済参考報 2013年10月4日)。 新四化とは、(1)市場化、(2)グローバル化、(3)都市化、および(4)情報化である。確かに今後10年間は、この新四化を達成できるか否か、どのように達成して行くかが重要な課題となるだろう。新四化の概念をごく簡単に紹介し、その問題点の指摘をする。 (1) 市場化 市場化とは、政府は、@市場の競争原理を尊重し、経済のマクロコントロールに専念し、A民間の経済活動には干渉しないようにするということである。李克強が2013年3月に述べた「すべて市場でできることは市場に委ね、すべて社会でできることは社会に委ねる。」(これを「放」という。)ということである。中央の職能を地方に委譲することも含む。 内陸の地方都市ほど財政が不健全である。この場合、中央政府は地方に権限を委ね、市場メカニズムに任せたのだから、その結果の正否には責任を負わないということになる。所得格差の拡大も市場経済化の結果であり、これに適切に対処できていない現状から、中央政府の責任回避のための市場化ということになりはしないか懸念される。 (2) グローバル化 グローバル化とは、商品・サービス貿易および資本流動において巨大な発展の余地があり、これを開拓するということである。例えば、インド、アフリカ、南米、ロシア等に発展の潜在力があり、2020年までに中国の輸出額を全世界の15%にまで増やすことは可能であるという。 中国企業の海外進出(走出去)も推進されている。このとき、中国の実務手続に対する無知、コンプライアンスの無視、ビジネス・インテグリティーの欠如などの問題があり、さらに中国型新植民地主義への批判もある。フィリピン政府が、2013年1月に南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)の領有権を巡って中国を相手取って国連海洋法条約に基づく仲裁申立てを国際海洋法裁判所にした。中国は審理に応じないようであるし、欠席審理をしても3〜5年の審理期間を要し、それで仲裁判断が示されても、中国は従いそうにない。適切なグローバル化ができるだろうか。 (3) 都市化 2025年までに都市化率を65%前後にするという目標を達成したいとしている。数字上は、ほぼ達成できることになる。 しかし、都市化率のみが高くなっている。しかも、中国の都市化は、「土地の都市化」、土地投機であり、工業化の結果ではないという問題がある。所得格差の拡大および貧困の未解消、工業化の遅れという二大問題が存在する。中国政府によって、この解決策が明らかに示されているとはいえない。 (4) 情報化 情報化レベルを高めるため、2つの融合を図る。1つは、製造業と情報産業の融合。もう1つは、情報化技術を使ったサービス業の発展である。 外資の参入規制は存在するし、どのように情報産業を整序するのかその方向性が示されていない。 新四化のための法整備をすることから検討する必要があるだろう。
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