★バックナンバー一覧
(2013年11月28日)
2013年11月12日に中国共産党の第18期中央委員会第3回会議が4日間の会期を終えて閉幕し、「中共中央の全面的に改革を深化させる若干の重大問題に関する決定」が採択された。 特段の新しい方針も示されることなく、政治改革にも手が付けられないだろうという大方の予想通りの会議であった。新しい決議としては、国家安全委員会の創設の決定くらいだろうか。国家安全委員会が所掌する国にとっての安全問題とは、国土の安全、すなわち反乱、チベットおよび新疆問題、インターネットの監視ということのほうが外交問題よりも中心課題になりそうである。習近平がこの委員会のトップに就任するので、習近平の権力はさらに強固なものになる。 もう一つ決議の内容で多少評価できるとすれば、司法制度改革に関するものである。指導方針が示されているだけなので、どこまで具体的な施策が策定されるか判然としないが、多少は期待しても良いだろうか。 三中全会コミュニケでは、9節「法治中国の建設を推進する」(30〜34項)で司法制度改革について言及されている。 ここで、「法治中国の建設を推進する」ことの概念について、次のように叙述している。 「法治中国の建設は、必ず(1)法による治国、法による執政、法による行政をともに推進し、(2)法治国、法治政府、法治社会を一体的に建設しなければならない。司法体制改革を深化させ、公正・効率的・権威のある社会主義司法制度をすみやかに建設し、人民の権益を守り、人民大衆がどの一つの司法事案においても公平・正義を感受できるようにする。」(括弧付き数字は、文章を分かりやすくするために筆者が付した。) 30〜34項の各項の柱だけ示すと以下の通りである。(1)憲法および法律の権威を守る。(2)行政の法執行体制改革を深化させる。(3)法による独立公正な審判権および検察権を確保する。(4)司法権力の運営メカニズムを健全にする。(5)人権の司法保障制度を整序する。労働教育制度(労働を通しての再教育制度)を廃止し、社区(区より小さい地域—街道—のコミュニティー)における矯正制度を整える。 このような司法制度改革が示されたのは、中国における社会矛盾が増大し、生態環境が悪化し、社会の治安が悪くなるなど人民の切実な利益にかかわる問題が増え、これに対処する必要性が高まっているからである。 ただ、三中全会コミュニケの叙述で注意しなければならないのは、単に司法制度改革と言っているのではなく、「社会主義」司法制度と言っていることである。社会主義という枕詞を切り離せない。そうであると司法改革の根本には、共産党のあり方が人民の利益に優先するということになる。そのような司法制度改革とは、具体的にどのようなものになるのか見守る必要がある。
※サイトの記事の無断転用等を禁じます。