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(2013年12月12日)
広東省仏山市南海区に本社のある「路必達馬球皮革製品有限公司」は、2013年11月26日に、中国国家工商管理総局商標局がバーバリーの登録商標G732879(チェック柄の商標)の18品目について登録を取り消す決定をしたことを明らかにした(第一財経日報 2013年11月27日)。なお、バーバリーは、この商標取消し決定について、直ちに不服申立て、再審請求をしている。 バーバリーのチェック柄の商標が取り消された根拠は、現行商標法(2001年12月1日施行)44条4号の「登録商標が継続して3年間使用しなかった場合には、如何なる者も商標局へ当該登録商標取消を請求することができる。」というによる(改正商標法では49条に同様の規定がある。改正商標法は、2013年8月30日に改正が採択され、2014年5月1日から施行される。) 路必達馬球は、手袋、ビジネスバッグ、キャリーケースなどを主に生産している皮革メーカーである。現在、広州友誼商店にショップがあるほか、香港に14店舗、台湾に6店舗を有している。同社の陳国生董事長によると、同社はタータンチェック(スコットランド・チェック)柄の皮革製品を27年来生産してきており、主に「ポロサンタロバータ」(POLO SANTA ROBERTA)ブランドで生産をし、製品を米国、香港、台湾などで販売してきたという。 しかし、2004年にバーバリーに商標権侵害で大陸、台湾、香港で訴えられ、敗訴したという経緯があった。 そこで今般、路必達馬球は、バーバリーが登録した商標を継続して3年間使用していないとして抹消の請求をし、これが認容されたということである。今後、路必達馬球は、9年間の営業利益損失分としてバーバリーを相手取って5億元の損害賠償を訴える予定であるという。また、バーバリーの他の商品シリーズについても商標取消しの申立てをする可能性もあるという。 バーバリーは、これまでに同社の商標侵害および不正競争を理由として、数十社を訴えたという。そこで、路必達馬球は、さらに他の企業と共同でバーバリーに損害賠償を請求する訴えを提起する予定であるという(毎日経済新聞 2013年11月29日)。 この商標取消し決定は、実務上どのような効果をもたらすか。米デチャート法律事務所のパートナー弁護士陶景洲は、バッグやその他の皮革製品でタータンチェックの製品が反乱することが考えられる。模倣品もさらに反乱することもあり得る。そうであるとタータンチェックを使用した製品に対する消費者の信頼性が著しく低下することになると言う。 中国において商標の希釈化という問題も生じることになるだろう。商標の希釈化とは、他人が著名商標を本来の商標権者が登録していない商品などに無断で使用し、この結果、本来の商標の固有の価値が弱められることをいう。 著名商標の保護に関しては、(1)相対保護主義と(2)絶対保護主義の2つの考え方がある。 (1)相対保護主義は、パリ条約が採用している方式である。これは、他人が著名商標と同じかまたは類似の商標を本来の商標権者と同じ業種において登録し、使用することを禁止する。しかし、逆に言えば、類似商品への商標使用でなければ、これは認められるということになる。 (2)絶対保護主義は、TRIPs協定が採用している方式である。これは、他人が著名商標を使用することは、たとえ業種が違っていても、または全く関連がない商品であっても、当該商標を登録して使用することを一切禁止する。 では、大多数の国が商標の希釈化理論として、絶対保護主義を採用している。 しかし、中国商標法は、これに関して相対保護主義を採用している。この根拠が商標法13条後段の次の規定である(改正商標法13条2項、3項に同様の規定)。 「同一または類似しない商品について出願した商標は、他人の中国で登録した著名商標を複製、模倣または翻訳したものであり、かつ公衆に誤認させ、当該著名商標権者の利益に損害を与え得る場合には、その登録とその使用を禁止する。」 この規定における問題の所在は、著名商標の権利者が当該商標を中国で登録していることが保護される要件になるということである。すなわち、著名商標が中国で登録されていないならば、保護の対象とはならない。 商標に関して市場争奪競争が激化し、企業利益に影響する割合がますます増大し、当事者間で紛争が激化することが多くなっている。
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