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Last Update:2014/02/13
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第253回 都市住民と農民の埋まらない格差の現実

(2014年02月13日)

  中国は都市化を進めているが、依然として都市と農村の格差、都市住民と農民の格差が埋まらない。
  ニューヨークタイムズ紙(2014年2月9日付)は、中国の都市化は村(郷村)と民間文化を消失させていると報じている。同紙によると2000年に370万あった村が2010年には260万となり、毎日約300の村が中国から消えているという。作家の馮驥才は、村が消失すると村に根付いている文化も一緒になくなると懸念を表明している。中国政府は、全国規模で歌曲、舞踊、戯曲など破壊されつつある伝統である非物質文化遺産約9,700を収録するプロジェクトを行っている。このうち80%が村に残る伝統である。
  ところが、今、都市化のため農村の土地使用権が収用され、村がそのまま消失している。農地収用は地方政府官僚の腐敗の温床になっていることも周知の通りである。  農村は、地域住民の伝統的文化を残したくても強制立ち退きを強いられている。国務院は、2014年2月7日に農民対象の「新型農村社会養老保険」と都市の非就業者対象の「城鎮居民社会養老保険」を統一することを決定した。都市住民と農民との間にある年金の不平等をなくすということであるが、都市住民と農民との間に存在する大きな格差是正の一つでしかない。
  都市住民と農民との間には、物質的・非物質的財産だけでなく生命の価値についても大きな格差がある。
  福建省永安市人民法院は、2010年以降に人身損害賠償事件2,623件を受理したが、このうち死亡・障害損害賠償、後遺障害者の生活費負担に関する事件が653件で全体の25%を占めている。同法院の張志明によると、この損害賠償に関する訴えの審理に際して、被害者が都市住民であるのか農民であるのかによって賠償額が大きく異なるという問題がある(中国法院網 http://www.chinacourt.org/article/detail/2014/02/id/1210815.shtml)。
  ところが、都市住民か農民かの身分を判断する明確な基準もないというのが現状である。現時点において、以下の4つの判断基準が存在する。(1)公安部の戸籍登記、(2)政府関係部門の編集した都市地図、(3)民政部が編集した行政区画、(4)統計局が編集した統計用都市・農村区画、である。
  (1)公安部の戸籍登記は、現在では戸籍管理上は農家と非農家の区別はなくなっているという現状に適っていない。(2)政府関係部門の編集した都市地図は、10年毎に更新されるものであり、実情を反映していない。例えば、常住人口が2,000人以上で住民の50%以上が非農業人口であれば都市、常住人口が1,000人以上2,000人未満で57%以上が非農業人口であれば都市とするなど法的権威もない。(3)民政部が編集した行政区画は、上述の戸籍情報および都市図などを参考編集されたもので、明確な基準がない。(4)統計局が編集した統計用都市・農村区画も実情に適っていない。
  本来であれば、損害賠償額の算定については、被害者の収入、同収入源、生活水準などにより判断されるものである。しかし、現在は、都市住民であれば、都市住民の平均可処分所得および消費額、農民であれば、農民の純収入および生活費支出を損害賠償額の算定基準としている。都市住民か農民かの何れに属すると判断されるかにより、大きな違いが生じることになる。都市と農村、都市住民と農民のこのような格差や差別がなくなるのはいつのことになるのであろうか。

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