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Last Update:2014/02/27
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第254回 GDPの底線

(2014年02月27日)

  2014年2月10日の人民日報は、「安易にGDPを英雄扱いするな」という文章を掲載した。2月27日には、「合理的な経済成長率は必ず確保しなければならない」と指摘する文章を掲載した。
  GDP至上主義、盲目的なGDPの数値追及には多くの問題が内在することについては、このコラムでも叙述してきた。中国も当然にその問題についての認識を強くしている。しかし、2月10日と17日の人民日報の論調からすると、GDP至上主義からは脱却しようとしながらも、確保しなければならない「底線」があるということである。
  GDPの底線は、どのレベルなのか。どうしても7.5%は必要だということになりそうである。このような数字の根拠は何か。
  人民日報の文章によると、就業の確保、そして、都市の失業率を5%程度に抑えようとするならば、7.2%の成長率がなければならない。GDPが1%成長すれば、およそ130万人から150万人の就業が確保できる。また、これは、2020年にGDPおよび都市住民の1人当たり平均収入を2010年比2倍にするという目標達成のためにも必要な成長率である。人民日報は、経済活動が停滞すると企業の受注が減り、工場の稼働率が落ち、人員削減が始まり、新規投資が行われなくなる懸念があると指摘している。金融リスクの可能性も高まる。もし、7.5%のGDP成長率を確保できれば、銀行の不良資産は1%程度で収まるが、これを下回ると不良資産は1.5%を確実に上回ることになる。
  しかし、7〜8%のGDP成長率を維持することは、必ずしも容易ではない。経済成長と大気汚染に代表される環境汚染との矛盾があるからである。
  北京の大気汚染は、深刻度を増している。北京市は2013年10月に4段階に色分けした大気汚染度を示す警報制度を導入しているが、2月21日に「オレンジ警報」が出され、高濃度のスモッグが今後3日続くと予報された。オレンジは、赤に次ぐ2番目に高い警告で、学校や幼稚園に対し屋外での運動中止を求めるものである(レッド警報は、学校閉鎖や公用車の運転中止を命じる。)。
  大気汚染に関する監視の程度は強化され、2月22日までに北京市の110の工業企業が生産停止や操業時間の短縮を命じられ、これに従っているが、この効果は顕著とは言いがたい。
  河北省では高炉の撤去が集中的に行われている。これまでに15の工場の16基の高炉および3基の転炉が撤去された。国務院が河北省に鉄鋼の生産能力を6000万トン削減するように命じたことに伴う措置でもある。これにより河北省は年間の石炭消費量406万トンを減らし、二酸化硫黄の排出量を9,700トン、煤塵排気量7,000トンを減らす(中国広播網 2014年2月23日、http://jjckb.xinhuanet.com/2014-02/23/content_492673.htm)。
  以上の措置は、生産能力が過剰であるということもあるであろうが、環境汚染防止のために行われている施策でもある。電力の消費量が多い他の産業においても同様の措置が講じられている。
  さて、日本貿易振興機構(JETRO)は、2014年1月に発表された財務省貿易統計をドル建て換算し、2013年の日中貿易は総額3,119億9,518万ドル(前年比6.5%減)と、2年連続の減少となったと発表した。
  それでも2014年の展望について、「中国政府は経済の安定成長を維持する一方で、過剰生産設備の淘汰や環境保護規制などを強化する方針を打ち出して(おり、)……大規模な景気刺激策を実施する可能性は低いものの、工業生産や消費は前年並みの堅調な伸びを維持するものとみられる。…… 2014年の貿易総額は2年連続の減少から、小幅ながらも増加に転じる可能性が高い。」と述べている。
  JETROの発表にはないが、筆者は、環境関係の機械や技術の対中貿易が伸びるのではないかと考える。

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