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(2014年04月09日)
国務院は、「さらに企業合併を適切にし、市場環境を再編することに関する意見」(以下、「意見」という。)を2014年3月7日に制定し、同月24日に発布した。この意見は、国有企業改革を本格的に始めようとする趣旨が込められたものであると評価されつつあるようだ。企業合併・再編の主なターゲットが国有企業であると目されるからである。 中国は、国有企業改革に本腰を入れ始めたと言えるか。国有企業改革は、外資企業にとってどのような影響を与えることになるだろうか。 「意見」は、企業合併の矛盾を解決するための政策として、以下の7点を挙げている。 (1) 行政手続きの簡素化 (2) 金融サービスの改善(企業合併・再編に対する融資) (3) 企業所得税、土地増値税など税制の整備 (4) 土地使用優遇政策の整備(土地譲渡等の手続き)、および企業合併・再編に伴う従業員の再就職の斡旋 (5) 産業政策による企業連合、海外企業買収などの推進 (6) 企業合併・再編に対するサービス体制の強化 (7) 市場メカニズム機能の整備(地区封鎖の排除、民間資本の市場参入、国有企業改革の推進) 意見は、企業合併は、経営資源を最適化し、生産能力の過剰を調整し、産業構造を最適化することにもなるとしている。 さて、上記の改革を進めようとする場合、市場主体(国有企業、民間企業、外資企業など)の統一ということが問題になる。 李克強首相は、4月2日の国務院常務会議の席上、企業所得税の優遇範囲を縮小すると言っている。三中全会においては、国内企業と外資企業の適用法の統一についても言及されていた。すなわち、現在、外資企業に超国民待遇(内国民待遇以上に外資企業に有利な処遇)を与えているが、この優遇をなくしていいだろう、国内企業と外資企業を一元管理しようということである。 中国は、もはや国内企業以上に有利な待遇を与えることで外資を導入することに躍起にならなくても良くなった。むしろ中国企業の海外進出、海外企業買収を支援することの方が有用であるという考え方に転じてきている。 10年も前から合弁企業法、合作企業法、独資企業法を外資企業法に統合し、その後、外資企業法も整理し、公司法(会社法)に統合するという計画が言われていた。外資企業法の制定を飛び越して、一挙に公司法に一元化することが間近になってきたのだろうか。 中国進出外資企業の観点からは、超内国民待遇が供与されているという意識はなく、むしろ本当に内国民待遇を供与して欲しいと考えているので、市場主体が完全に公司法に一元化されれば、望ましいと考える。それでも現実には多くの既得権益層が存在し、一挙に改革が進むとはなかなか考えられない。「意見」に基づく今後の政策推進に注目したい。
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