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Last Update:2014/05/12
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第259回 上海自由貿易試験区の法的問題

(2014年05月13日)

  中国(上海)自由貿易試験区(以下、「試験区」という。)の実態が分かりにくい。とりわけ、試験区に設立された企業の法的地位、当該企業の契約の法的効力等がどうであるのか判然としない。
  「上海自由貿易試験区マスタープラン(総体方案)」(以下、「マスタープラン」という。)によると、試験区は政府の職能を改め、投資分野を拡大し、貿易発展方式の変化を推進し、金融分野を大いに開放し、法的保障を整備することを決めたというが、具体的にはなお明らかではない。とりわけ法的保障とはどういうことを言うのか。
  マスタープランにおいて、外資の誘致に関しては、外資企業法、中外合資経営企業法、中外合作経営企業法の三資企業法に基づく企業の設立、分割、合併、経営期間、譲渡、終止などの重大な事項に関する審査・認可手続を試験区内に限っては停止し、事後報告(登録)制度を試行してみるとしている。  この措置は、全国人民代表大会常務委員会が、「中国(上海)自由貿易試験区において関連法規の行政審査・認可の暫時調整を国務院に授権することに関する決定」を発布しており、これに基づく措置である。
  では、試験区内企業と試験区外企業との取引契約において紛争が生じた場合、どのように解されるのか。
  中国契約法44条の規定は、法令により審査・認可手続、登記手続をしなければならないと定められている契約は、この手続をしなければ発効しないと規定している。契約当事者間で紛争が生じた場合には、所轄官庁の審査・認可手続がなされていることが法的効果を生み、仲裁や裁判などの際の判断基準となっている。中国においては、契約自由の原則は認めながらも、実際には所轄官庁の審査・認可手続きにより契約の有効性を判断するということが習慣となっている。そこで、審査・認可手続きがないが故に、契約の法的効力が認められなかったという仲裁事案などがある。この契約法の規定は、試験区内においてどのように解されるのか明らかでない。
  「中国(上海)自由貿易試験区のサービス業拡大開放措置」により、金融、航空運輸などサービス業に対しても門戸を広げたというが、試験区内でしか事業ができないというようなことが生じれば意味がなさそうである。
  上述した通り、試験区外における事業活動、試験区外企業との契約の効力などがどうなるか明らかでないと、外資企業としては安心した取引が行えないし、試験区への投資も躊躇することになるだろう。それどころか、試験区内企業間の取引にしか諸規定が適用されないとなれば、企業の活動は著しく制約され、試験区の存在意義はなくなる。
  中国政府には、さまざまな問題について可能な限り争点を明らかにし、判断基準を示すことが求められる。

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