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Last Update:2014/06/10
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第261回 中国の夢と群体事件

(2014年06月10日)

  『経済参考報・財智週刊』が、「私の中国の夢」というテーマで投稿を募集している。
  「中国の夢」とは、何か。習近平総書記の定義によれば、偉大な中華民族の復興を実現することである。換言すれば、近代の「百年の恥辱」をぬぐい去ることである。過去の指導者よりも遥かに権威主義的であり、民族主義者であると言われる習近平の目標は、中国を世界の指導的な地位に再び引き上げようということである。そうであるので、領土(領海)問題に関しては、「寸土必争」(一寸の土地でも必ず争って獲る。)という非常に強硬な姿勢を示している。
  では、一般市民は、「中国の夢」をどのように考えているのだろうか。
  コンサルタント会社のMillward Brownとメディア会社のWPPが、中国人500人に「中国の夢」について行った調査結果が、ウォール・ストリート・ジャーナル紙で紹介されている(华尔街日报 2014年 05月 09日。米国、英国でも同時に同じ調査を実施)。
  この調査によると、70%の中国人が個人的に中国の夢を実現することが大切だと感じているという(米国人は65%、英国人は39%)。また、61%の人が国家の将来を信じており、さらに66%の人が自分自身の将来を信じている。
  では、個人が夢を実現する上で大切なことは何かという設問に対して、「個人の努力」が79%、「人脈」が60%、「政府の政策支持」が37%などという結果である。米国では、「人脈」や「政府の政策支持」のウェイトは、それぞれ29%、11%である。ここに中国の特徴がありそうだ。ここには、政府に従うことが、自分の夢を実現する上で最も確実な方法であるという現実的な理由がありそうだ。
  一般に1人当たりのGDPが2,000ドルを超えると民主化が急速に進むという経験則があるが、中国ではこれが通用していない。とりわけ権威主義の強い現政権下にあっては、現政権の唱える政策を不合理、不道徳であるとは感じながらも、それでも道徳規範のように守っていた方が、民主を要求するよりも幸せになれるという考えのようだ。その時々の政権の道徳規範であるから、政権が変われば、この道徳規範も変わるので、そのときどきに政権に従順であれば、保身できるという中国人の処世観念がある。
  だから、1989年6月4日の天安門事件で失脚した趙紫陽総理の元秘書の息子Bao Pu(鮑撲)は、中国で中間所得層が増えても民主化は進まないと言う(NIKKEI Asian Review 2014年6月5日)。
  それでも民主を求める動きは全くないと言えるか。群体生の事件が多くなっているということを前回のコラムで書いた。群体性事件のうちの典型的なものに環境保護を求めるものがある。ゴミ焼却場の建設、PX工場建設に周辺住民が反対する運動が多くある。  このような環境保護に関する群体性事件は、文字通り環境保護だけを求める行動であると言えるか。深層には、政治的な背景があると考える中国人学者も少なくなさそうだ。党や政府の幹部と企業との癒着、贈収賄等の腐敗に対する不満もあることは否定できそうにない。公平、公正な政治・行政を求めることは、民主につながるものである。

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