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Last Update:2014/06/25
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第262回 審計署の会計監査と報道規制

(2014年06月25日)

  中国審計署(日本の会計検査院に相当)は、2014年6月20日に11の国有企業に対して行った会計検査結果を発表した。
  対象企業は、煙草(タバコ)総公司、核工業建設集団公司、航天(宇宙)科技集団公司、航天科工集団公司、船舶工業集団公司、兵器装備集団公司、中国石油天然気(天然ガス)集団公司、大唐集団公司、海運集団総公司、華潤集団有限公司および冶金科工集団有限公司の11企業であった。
  審計署は、検査の結果、(1)国の産業構造調整政策を十分に実行していない企業、(2)投資プロジェクトのフィージビリティ・スタディーが不十分かつ不適当な企業、(3)財務管理が十分に規律されていない企業、(4)企業に内部統制制度が不十分な企業が見つかり、違法・規則違反問題がなお存在し、この問題が深刻に見られる企業があったと発表している。
  審計署は、190人に対して厳しい処分が行われるとし、この中には局長級の幹部が32人含まれているという。企業は、すでに追徴課税1.78億元を支払っている。
  特段に言及されたのが華潤集団有限公司(以下、「華潤集団」という。)と中国石油天然ガス公司(以下、「中石油集団」という。)である。
  華潤集団に関しては、そもそも4月に中共中央規律検査委員会により宋林董事長に2010年に実施した山西省炭鉱の買収に必要以上の多額の買収金額を提示し、数十億元の国有資産を流出させた「重大な党紀違反」があったとして、党委員会書記の地位を解職されている。王師廷主席も同様の規律違反を追及されている。
  中石油集団に関しては、2006年11月から2013年7月までの間に傘下の撫順石化支社など9社の工事および資材購入が規定通りに公開入札されず、260.35億元の不正契約があったと指摘された。蒋潔敏前董事長(元国務院国有資産監督管理委員会主任であったが、解任されている。)、王永春副総理ほか高級幹部が規律違反の疑いで調査を受けている。
  なお、蒋潔敏は、周永康・前党政治局常務委員が権力基盤とした「石油閥」で周氏の側近であった。
  さて、中共中央規律検査委員会は、思想・言論の統制を強めている。最近、大学教員や社会科学院等シンクタンクの研究者が、(1)学術に名を借りた虚偽の宣伝、(2)ネットを利用し、国外の理屈に合わない議論を流布、(3)政治的に微妙な時期に不法な活動を実施、(4)国外勢力との結託という行為をしていると厳しく批判している(東京新聞 2014年6月20日)。
  新聞等の報道も規制されている。国家新聞出版放送テレビ総局は、新聞記者が自らの取材対象業種、担当分野の範囲を越えて報道をすることを禁止し、批判的報道をする場合には、事前に所属機関の同意を得なければならないとし、また、新聞記者自身がホームページを開設することを禁止した。記者の担当業種や担当分野を明確に区分することができるのだろうか。政府の都合により、いかようにも恣意的に判断できるだろう。
  党・政府幹部に多くの不正、腐敗があることが指摘されるが、これを追及しようとする報道機関は、独自の取材も許されそうにない。政府発表の政敵の腐敗追及だけしか報道されないようになるのだろうか。

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