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Last Update:2014/07/07
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第263回 華人・華裔のアイデンティティーと中国

(2014年07月07日)

  香港の次期行政長官選挙が2017年に迫っている。この選挙のあり方を巡って、香港で大規模なデモ等が発生している。
  香港で普通選挙の実施を求める民主派団体「オキュパイ・セントラル(占領中環)」は、6月下旬に非公式の住民投票を行った。投票数は、78万票を超え、香港の有権者数351万人の22%になった(New York Times 2014年6月30日)。
  彼らは、有権者の1%以上の署名があればだれでも立候補できる仕組みを要求し、このような仕組みの中で試験的な住民投票を行ったものである。彼らは、香港基本法(香港の憲法に相当する。)において、中国政府は、香港の有権者が普通選挙によって指導者を選出できるようにすべきだということに同意していることを要求の根拠としている。
  これに対して、中国政府は、候補者の自由な立候補を認めず、指名委員会が候補者を決めるという方針を貫いている。
  そこで香港民衆による非公式住民投票やデモが発生している。このような運動が行われているのは、中国政府が香港の民主化を認めず、政治的にも中国かを進めることに対する不満が嵩じていることを示す現象の一つであると考えられる。上記の投票に関して、中国共産党系の新聞、環球時報は6月23日、香港の住民が選挙制度への意見を示す非公式投票について「ばかげている」と社説でからかったとウォールストリートジャーナル紙は伝えている(同紙日本語版 2014年6月11日)。
  中国政府は、香港に対する圧力を強めている。中国国務院新聞弁公室は、6月10日に「香港特別行政区における一国二制度の実践」(白書)を発表した。白書は、「単一国家として、中国の中央政府は地方のあらゆる行政地域に関する包括的な管轄権があり、それは香港特別行政区を含んでいる。」と述べ、香港の高度の自治は「固有の権限ではなく、中央指導部の委任に基づくものだ。」と強調した。そして、「香港特別行政区の高度の自治は、完全な自治ではなく、地方分権的な権限でもない。それは中央指導部の承認に基づき、地方を運営する権限である」と述べている(ウォールストリートジャーナル日本語版 2014年6月11日ほか)。
  世界に華僑(中国から海外に移住し、中国国籍を保持している者)、華人(中国から海外に移住し、国籍も中国でなくなった者)および華裔(中華民族を祖先に持つ者で華人の2世、3世以降の者)が約4000万人いる。彼らのアイデンティティーはどうなのであろうか。
  中国共産党・政府は、中華民族の復興を中国の夢としているが、華人・華裔はこのような夢に共感し得るのか。華人・華裔経済(圏)が形成されているが、華僑世代が、華人世代からさらに華裔世代になるとき、国家(中国)に対するアイデンティティーは有しなくなりつつあるのではないか。
  中国共産党・政府のいう中華民族の復興という中国の夢は、実は中華民族の復興ではなく、中華人民共和国の台頭という夢であると認識される。華人・華裔は、民族的なアイデンティティーを有し、同郷に対する帰属意識は強く持つと思われる。そこで、この意識の中で、中国大陸との経済的協力関係を強めるだろう。しかし、思想的には相容れないところが多い。香港での普通選挙非公式の住民投票、大規模デモを見ると、このようなことを感じる。  

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