★バックナンバー一覧
(2014年07月22日)
国家統計局は、2014年7月16日に上半期の国民経済の状況についてのデータを発表した。 発表によると、上半期のGDPは前年同期比7.4%増で、第2四半期では同7.5%となった。第1四半期より0.1ポイント増え、伸び率はやや加速していると評価している。都市の新規就業人口は700万人を超え、農村の出稼ぎ労働者数は前年同期比1.8%増、307万人増えている。また、都市住民消費価格は同2.3%増であった。 このような経済状況について、国家統計局は、「総体平穏、穏中有進、穏中有昇」の12字で表現できるとしている。「総体平穏」(経済状況が総じて平穏である)というのは、上記の統計に加えて、都市と農村住民の収入が伸び、構造調整が進展していることなどがあるからである。「穏中有進」(安定の中で進展している)というのは、産業構造の調整が進み、第三次産業のGDPに占めるウェイトが46.6%と増えていることや地域間格差、都市と農村住民の所得格差の縮小などがあるからである。「穏中有昇」(安定の中でグレードアップしている)というのは、産業分野で新興産業、新業態、新製品などが生まれ、企業のイノベーションがみられることなどがあるからである。国家統計局は、プレスリリースの席上、中国証券報の記者の質問に答えて、上半期の高技術産業の付加価値が前年同期比12.4%増えていると述べている。 新華社(7月17日)によれば、7月15日に開催されたエコノミスト座談会の席上、李克強が「経済発展は、新たな就業機会を提供し、所得水準を向上させ、高品質・高効率で、省エネ・環境保護に資し、かつ“実事求是不夸社大”(客観的事実通りで誇大ではない)でない限り、経済成長率は7.5%より高くても低くても構わない。」と述べたという。 中国経済は、上述の通り安定的に回復基調であり、好調を持続すると捉えていいのだろうか。それでも気になる問題がある。 中国人民銀行は、6月に新規融資とマネーサプライを5月の1.4兆元から1.97兆元へと増やしている。上述の国家統計局の数字は、政府の景気刺激策(大規模な景気刺激ではなく、安定的に成長率を微増させようとするもの)が功を奏した結果である。資金は、多くが鉄道などのインフラ整備、低コストの住宅建築プロジェクト、製造業などに注ぎ込まれているとしている。これがどれだけ有効な投資になっているか、無価値な投資をしていないか、まだ判然としない。 不動産市場などで成長が落ち込んでいる分野もある。これらは下半期の成長にとっての足枷、引下げ圧力にならないとも限らない。 今の中国には、格差拡大の是正、就業機会の創出、産業構造の調整、生産過剰産業界の再編、環境保護など多くの問題がある。こうした中で、やはり7.5程度の経済成長を維持し続けなければならないという強い制約がある。 根源的な対策をする余裕がなく、立ち止まると倒れてしまう自転車操業経済といえそうでもある。F1レースに例えれば、ピットストップすることもできないということになろうか。
※サイトの記事の無断転用等を禁じます。