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(2014年08月18日)
中国事業を展開する企業、中国進出は、中国で経済行政法が如何に適用されるのか、その適用基準は何かが随分と気にかかるのではないだろうか。 経済行政法とは、このような名称の法典がある訳ではなく、行政法の中で経済分野にかかわる法領域にあるものをいう。国民経済を健全に発展させ、経済秩序の維持を図るために、行政手段をもって経済をコントロールすることがある。積極的に経済を振興させるための法もあれば、自由競争の行き過ぎを抑制するための法もある。 ここでこのことを話題にするのは、今、国家発展改革委員会による外資企業に対する独占禁止調査に対して若干の疑問があるからである。 すでに新聞などで報道されているので周知のことであろうが、価格カルテルなどの取締りの行政機関である国家発展改革委員会が、独占禁止法(反独占法)違反の疑いで欧米のカーメーカーの調査を開始している。日本の自動車部品メーカーも同様の調査対象になり、日本のカーメーカーも販売店で提供する部品価格について関連書類の提出などを求められたという。 また、独占禁止法関係ではないが、北京市工商局が海外の衣料品メーカー数社に対して、製品が色落ちしやすい、耐摩耗性が低いなど品質に問題があるとして調査を実施し、複数の衣料品ブランドを不合格としたということも伝えられている(日本経済新聞 2014年8月9日)。 経済行政法に関しては、政府と市場の関係を如何に規律するのかが問題となる。このために行政が市場に干渉する場合には、その目的、範囲(必要最小限)、方式(政策と法的手段)、干渉の効果とリスクが十分に検討されなければならない。 中国の独占禁止法の立法趣旨は、同法1条を分析すると、(1)最も重要なこと、すなわち独占禁止法制定の形成基準として、社会主義市場経済の健全な発展を促進することがあり、(2)このために消費者の利益と社会の公共利益を確保したく、 (3)それには経済運営の効率を高めることが必要で、(4)この要件として市場の公平な競争を保護することがあり、(5)さらにこの要件を満足するために独占行為を予防し阻止する、ことである。 日本の独占禁止法は、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的としている。 中国と日本を比べると、独占禁止法制定の形成基準が、中国は社会主義市場経済の健全な発展を促進することであるのに対して、日本は一般消費者の利益を確保することである。中国は国の経済体制が市民の利益保護より優先されているということになる。経済行政法という場合、先進資本主義国が「行政と市場」の関係であるのに対して、中国は「政府(または政治)と経済」の関係ということになるのだろうか。 独占禁止法の適用基準が曖昧で、行政機関または政府・党の恣意的な運用がなされていないだろうか。中国企業の政府・党との癒着、品質レベルなどを考慮したとき、中国政府・党が、経済行政法を国内産業保護または排外主義のために利用されていないか気になる。
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