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Last Update:2014/08/27
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第266回 行政改革と市場〜 ネガティブリスト方式で市場に対する行政改革はできるか

(2014年08月27日)

  国際貿易投資の推進、とりわけEPA/FTA/投資協定における自由化約束に関して、市場アクセス等の自由化義務を規律し、自由化義務の例外とする措置や分野のみをリストにおいて明示的に示すネガティブリスト方式が採用されるようになってきている。
  上海自由貿易区で同方式が用いられたことは周知の通りである。このネガティブリスト方式は、単に国際貿易投資における機能だけでなく、国内市場の自由化を促進し、市場メカニズムを機能させる上でも、中国にとって重要な統治方式になると考えられる。
  李克強首相は、「市場主体にとっては、法律が禁止していないということはすなわち自由であるということだ。」と述べている。
  ハイエクは、社会主義計画経済がうまく行かないのは、価格メカニズムが機能せず、市民の明文化され得ない知恵が活用されないからであると言っている。そうであるところ、ネガティブリスト方式による市場管理は、市場主体の自由な行為を認容し、彼らの見えざる知恵を活用し、経営資源の有効利用を図ることになるものである。
  そうであっても、今の中国で市場管理をするのにネガティブリスト方式が直ちに適用できるか否かというと疑問である。
  例えば、食品行政について見てみたい。食品安全法4条の規定によれば、国務院品質監督、工商行政管理および国家食品薬品管理部門が、それぞれ食品生産、流通、飲食サービスの監督管理を分担して行う。しかし、現実には品質技術監督管理部門が、流通食品について管轄する。上海市品質技術監督管理局が2008年第2四半期のキャンデーの品質について抜き取り検査を行っているが、生産および流通分野の83種類の商品を対象として検査を行っている。このように品質技術監督管理部門が、生産分野だけでなく、流通分野においても所轄している。また、飲食店は、食品衛生法により食品衛生許可証を取得し、公共場所衛生管理条例により公共場所衛生許可証を取得しなければならず、この発給は衛生部門が所轄することになっている。しかし、実際には衛生部門は食品衛生及び公共場所の衛生状態の審査と食品衛生許可証の発給をするものの、公共場所衛生許可証については食品薬品監督管理部門も所轄し、衛生部門が単独で管轄できないままでいる(李幸祥「食品安全監督管理体制改革研究:上海的実践」経済法学・労働法学、2014年第1期、72-79頁)。
  このように二重または多頭の行政管理が行われている。このために飲食店など経営者にとっては負担が多くなっている。そうであるから、上海福喜食品が使用期限切れの鶏肉を外資企業に販売していた問題などが起こる。利益至上主義に陥り、行政コストなどを回収しようとする。監督管理の手加減を期待して、また許可証取得のために公務員に商業賄賂を贈るなどの事件が蔓延っている。逆に管理部門間の職責が曖昧であるから、責任逃れのための所轄の押付け合いということも生じている。市場の管轄にかかわる行政改革が不可欠であると考える。これはネガティブリスト方式ではできないことである。
  根源的問題として、経営者のモラル、利益至上主義、行政部門の腐敗の是正に取り組み、市民の意識改革も必要ということが言える。

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