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(2014年09月24日)
中国の経済成長が壁にぶつかっているようだが、このときに再び経済成長を遂げるための議論が行われている。 現在、潜在成長率を抑える制度上の障碍がある。これは、(1)労働力供給上の障碍となっている戸籍制度、(2)投資効率改善の障碍となっている投融資制度、および(3)中小企業と民営経済が直面している融資のボトルネックである。この制度上の障碍を取り除けば、生産成長率を再び高めることができるという指摘もある。 人口問題の専門家として著名な中国社会科学院副院長の蔡ム氏が「経済参考報」紙のインタビューを受けて、新たな改革の提案について述べている(経済参考報2014年9月18日)。以下、ごく一部であるが重要なポイントを紹介したい。 中国で人口ボーナスがなくなってきたことが経済成長率を失わせる結果となっているが、蔡は人口問題の専門家として、これに係る改革の必要性を指摘している。 2010年以降労働年齢人口のマイナス成長により、潜在成長率も必然的に減少した。試算ではGDPの潜在成長率は、1995〜2010年に平均10.3%であったのが12次五カ年計画期(2011〜2015年)には平均7.6%となり、13次五カ年計画期(2016〜2020年)にはさらに減少する。 人口ボーナスがなくなったということは、成長の源泉がすでになくなり、伝統的な成長モデルは適用できなくなるということである(人口ボーナスに関しては、筆者のコラム第228回「機会の窓:中国の経済成長はいつまで続くか?」(2013年01月23日)を参照頂きたい。)。では、これからも発展を続けるにはどのような措置を講じる必要があるのか。 蔡は、中国経済は成長モデルを転換する必要があるという。どのような転換かというと、労働力および資本の多投入型から、イノベーションおよび生産性向上型への転換である。 このためにも農民工に対する待遇の改善などが必要であるとして、以下の通りの指摘をしている。 例えば、戸籍制度改革の目的は、農業人口の都市人口化であり、これには公共サービスの平等化が必要である。現在、農民工は都市就業人口の35%を占めているが、この改革により農民工の就業はさらに拡大する。労働力供給が増え、労働者の技能の向上が図られれば、人口ボーナス効果を引き延ばすことができる。さらに、教育体制改革および整った従業員の訓練制度を形成することで、人材資源のレベルアップを図り、産業構造の調整・レベルアップのために必要とされる技能を有する労働者を産み、経済のイノベーションの新たなエンジンとすることができる。 現在、農民工の都市滞在期間は平均して9年である。生産性を高めることのできる労働力とはなり得ない。人材の十分な開発と利用ができておらず、人材資源の浪費である。有効に活用するためにも基礎的な公共サービスの平等化を進め、農民および農民工の子女が都市で平等な待遇、教育の機会を享受できるようにする必要がある。 都市化を推進してきた副作用として農民が貧民化してきたという事実がある。このような「脆弱群体」や「辺縁人群」を置き去りにした経済成長はもはやあり得ないということであろう。戸籍制度改革の姿が見えてくるのもそう遠くのことではないかも知れない。
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