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Last Update:2014/10/21
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第270回 CSR経営の課題

(2014年10月21日)

  前回のコラムで会社の社会的責任と企業の公益指数の問題についてごく簡単に触れた。
  現在、CSR経営に取り組む企業は少なくないが、現実的問題として、CSRの概念や社内の誰が主体となって具体的にどのような取り組みをすべきであるのか試行錯誤しているところであり、必ずしも思うようなCSR経営ができていないようである。
  例えば、エリクソン中国は、「政府・公共事務」の専門部署を設置しているが、同社のCSRプロジェクトは競争力を削いでいるのではないかという外部からの意見もあるようだ。これに対して、CSR活動は長期的競争力という観点からより良い価値をもたらすものであると反論している。
  多くの企業でCSR部門を設置し始めているが、悩みは少なくない。この悩みとは、第一に、(1)全社的理解の欠如、第二に、(2)部署の構成要員、第三に、(3)CSR担当者に対する教育である。
  (1)全社的理解の欠如に関しては、上述のエリクソン中国のケースでも見られるように、CSRが果たして会社に利益をもたらすものであるか否かということについての認識が社内で十分にもたれているとは言えないことである。また、CSRとは、狭義の会社の機関設計、企業統治のことをいうのか、または公益も含めのかについて、社内でも共通の概念がない。
  (2)部署の構成要員に関しては、上述のとおりCSRに対する理解が不足しているところ、専門の担当者に任命されても当該社員に戸惑いがあることである。社内での理解がないところ、主体的に業務を行えない。また、新しい部門であり、社内出世を希望する社員にとっては、昇格のチャンスをなくす部署への配転という意識が持たれる。出世コースから外れたとの思いを抱くこともありそうだ。社内の一部門であるから一人で担当する訳ではないが、企画、営業、財務、マーケティン部などのどの部署から人員を集めて構成するのが適当かについても悩ましい。単にCSR活動に対する興味がある社員がいなくはないようだが、彼らは企業経営について知らないことが多く、これでは企業活動とコラボができない。そこで、CSR活動だけでなく、根本的に企業経営全般について理解しているマネージャーが部門のトップに就任することも必要である(「CSR经理应该是一个懂公司的人」『21世紀経済報道』2014年10月14日)。
  (3)CSR担当者に対する教育に関しては、上記故に特段の教育がなされることが求められるようになってきている([社会责任管理者的能力建设]同上)。社会的責任の概念、および企業と社会にとっての意義について教育し、理解を高めることが必要であり、さらに企業内部の他部門との協調により、チームワーク力を高め、新しい発想を創出することが求められる。
  日本ではすでにCSR経営を企業に説くことがビジネスになっている。CSRコンサルタントも活躍している。中国でもCSRビジネスがそろそろ始まる頃になっている。

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