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Last Update:2014/11/12
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第271回 2つの法治:「依法治国」と「以法治国」

(2014年11月12日)

  2014年10月に開催された中国共産党第18期中央委員会第4回全体会議(18期4中全会)において「依法治国の全面的推進の若干の重大問題に関する決定」が採択された。
  市場経済における国家統治メカニズムには、民主と法治が求められる。このときに「依法治国」が中央全会において初めて主 要議題となったことは時宜に適ったことである。市場経済においては、国と政府が個人、組織と対等の関係に立つことになるので、司法における和諧社会の実現 も促進されるものと期待される。和諧社会とは、本来的には「以人為本」、すなわち「人本社会」である。和諧社会は、法に基づき私権を保障しようとする社会 である。私権とは、市民の民事権利であり、なかでも財産権および人格権を保障することが重要な要素となる。「社会主義法治」を掲げる中国共産党が、「依法 治国」および「司法改革」について議論し、これにより市民法を形成し、市民の司法参加を促し、公正・公平な司法を実現しようとしていることは高く評価され る。
  しかし、現実はどうであろうか。習近平主席および中国共産党が上述のような意識をもって法治について議論したのであろうか。
  市民の権利意識が強まっているところ、社会主義国家および市場の統治の仕方は難しくなっている。国、党、企業や個人と いった社会の主体間の矛盾も増している。このような現実の中での法治に関する議論である。このとき、法治は何を意味し、どのような法治をしようとするのか が問われることになる。
  中国には2つの法治がある。2つの法治とは、(1)「依法治国」と(2)「以法治国」である。
  「依法治国」は、実質的法治主義であり、「法の支配」を意味する。西側諸国では、法治主義とは、「人民が、法により国家権力を治める」ことであり、これが「法の支配」である。
  「以法治国」は、形式的法治主義であり、「法治国家」意味する。形式的法治主義によれば、法治とは、中国共産党が、法により中国全土を治めることと定義されることになりそうである。法は、中国共産党が国を治める上での手段にすぎないと解される。
  中国で出版されている法律学習者のためのテキストの中で、法の本質について叙述されている箇所に、次の問題について討議せよという問題があった。
  あなたは、世界に「フリーランド」と「リーダーランド」という2つの類型の国しかないとすれば、何れを選ぶか。フリーラ ンドは、いかなる法律も存在せず、市民がやりたいことを勝手気儘に行える無秩序な国である。リーダーランドは、多くの法律があるが、1人の人間が、人々に どこに住み、何を着て、どのような仕事をし、何を読むかをすべて決め、人々はこのリーダーに服従しなければならない国である。
  さて、この問題に対して、中国人学生はどのような議論をするのだろうか。習近平主席の選択が「リーダーランド」であろうことは自明だろう。そして、今、これを体現しようとしている。


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