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Last Update:2014/11/26
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第272回 食品安全の根源的問題

(2014年11月26日)

  10月に北京を訪問した際に友人の中国人弁護士と四川料理店に行った。友人は、食品安全問題が気になるので、間違いのないレストランで食事をしたいと言い、彼が信頼しているレストランに連れて行ってくれた。
  この四川料理店のオーナーが、12月に六本木で開店するという。「なぜ?」とオーナーに問うと、次のような回答が返ってきた。「中国では食材を仕入れる際にごまかし、偽りばかりで、自ら品質・数量を逐一確かめなければならない。ところが、日本を訪問した際に驚いたのは、業者が常に正直で仕入れに何の不安もない。そのようなところで営業したいと考えた。」
  河南省舞鋼市人民法院は、今年に入ってから40件の食品安全犯罪を審理している(中国法院網 2014年11月15日)。2年前の10倍になっている。食品安全法の存在にもかかわらず、全国で食品偽装問題など一向に減りそうにない。むしろ増えているようだ。
  法院の事案を分析によると、問題の所在は以下の通りである。(1)個人事業主で小さなマーケットや自らの小店舗・屋台における営業での犯罪行為が多く、(2)犯罪者の学歴は、中学以下のものが75%、高校が20%を占めており、教育水準が低く、(3)彼らは真っ当な就職ができずにいる者であり、(4)文化水準も低いので、食品に使用が禁止されている添加物についても法律の規定を知らず、そうであるから、(5)犯罪行為であるという認識もしていない者も少なくないという。また、(6)一般の消費者の意識も安全よりも見てくれを重視しているのではないかとも言う。
  食品安全問題は、この法院の分析範囲にとどまっているだろうか。犯罪行為は大企業でも蔓延しており、もっと広がり、深刻さを増しているのではないか。米マクドナルドなど外資系ファストフードを主な取引先としていた上海福喜食品が、使用期限切れの肉を加工食品に使っていた事件は、日本のテレビでも随分と報道された。
  法院は、(1)食品取扱者の教育、(2)捜査当局の監督強化、(3)食品基準の制定(現時点ではないに等しい。)、(4)法整備、(5)犯罪者の刑罰強化、(5)市民による通報制度の導入などの対策案を提起している。しかし、このような対策では根源的解決にはならないのではないか。問題の根はもっと深いと考える。
  河南省は、11月に農業と非農業戸籍の区分を取消す決定をした。同省は、2020年までに約1,100万人の農業人口および都市常住人口を都市で戸籍所得できるようにし、都市化率を56%まで高める計画である。
  このような政策からは、都市に常住しながらも戸籍を持てない人々が十分な教育や就業機会を与えられていないという問題など、経済・社会体制の昔からの問題の存在が見えてくる。養老年金の拡充、地方政府の財政問題など問題が山積している。問題の根源的な解決法を模索しなければならないときに来ている。


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