コラムに関する感想
お問い合わせ
Last Update:2014/12/10
トップチャイナウォール
コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第273回 学問の自由:高等教育機関における教育の自由

(2014年12月10日)

  2014年11月13日の遼寧日報に「先生、中国のことをそんな風に言わないで〜高等教育機関の哲学社会科学教師に送る公開状」が掲載された。
  この公開状は、教師は講義によって学生の学問の自由に干渉すべきではないという主張をしている。公開状の筆者は、ある大学生が「私たちの教師は、いつも中国の悪口を言い、社会現象を批判している。中国のマイナス面しか取り上げていない。中国は、この教師が言うようにそんなに暗いのか。私たちは卒業後、どのような姿勢で社会に直面しなければならないのか。いったい誰がこの国の信と力を作っていくのか。」という手紙を送ってきたことに目を見張ったという。
  公開状の筆者(遼寧日報の編集者)は、「大学で中国についての客観的かつ正確な講義をどのようにするべきか、光明な心と姿勢による知識を如何に学生に伝えるか。重大な社会問題に対して回答すると同時に、問題の有効な解決方法をどのように導き出す回答をするのか。このことを考えざるを得ない。」と言う。
  2014年10月に中共中央は、「新しい情勢下における高等学校宣伝思想活動をさらに強化し、改善することに関する意見」を発布し、高等学術機関の教師の思想・政治の素質を向上させなければならないとした。
  10月21日に遼寧日報は、「大学講義における中国はどのようにあるべきか」(中国は大学でどのように講義されるべきか)というテーマで意見を集め、300余の意見が寄せられた。上記の学生のコメントは、この中の1つである。
  公開状の筆者は、ある教師には、(1)理論的認識、(2)政治的認識、(3)感情上の認識の3つが欠けていると言う。そして、ほんのわずかな期間だけ海外に留学経験のある教師が、西側先進諸国の三権分立を褒め称え、中国は西側先進諸国の道を歩むべきだと主張している。また、発展途上の問題を政治的基礎に欠陥があるように言っている。さらに、教師は講義で批判しっぱなしで済む。これは学問の自由に対する干渉ではないかと言う。中共および政府は、遼寧日報のこの公開状を支持する発言をしている。
  2013年に北京大学の経済学者・夏業良教授が共産党を批判し、解職された事件が思い起こされる。逆に、中国では学問の自由に対する統制が強化されていることが西側先進国からすれば懸念の材料となる。
  11月24日付の香港紙・民報(電子版)によると、習近平政権が言論統制を強める中国で、浙江省嘉興市の共産党機関紙・嘉興日報に勤務する論説委員が、微博で香港民主化運動を批判した医師に対する批判をしたところ、逆に批判される対象となり、党や政府を批判したことを理由に解雇された(東京新聞 2014年11月25日)。24日付の環球時報社説は「党をひどく言う者が党報を離れるのは道理である」と論説委員を批判する文章を掲載した。英紙ガーディアンは、中国政府が、香港の民主化要求を擁護した英下院議員リチャード・グラハム氏(保守党)へのビザ発給を拒否、これに対し超党派の英議員団が予定していた中国訪問を中止したと報じた(日本経済新聞 2014年11月27日)。
  学問の自由は、高等教育機関における教育の自由を意味する。中国で、学問の自由を口実に教育の自由が剥奪されようとしてはいないか。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002-2013 OBC-China Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はOBC-Chinaの商標です。
s