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Last Update:2015/01/26
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第276回 公共の利益とは

The concept of the public interest in China

(2015年01月21日)

  活気がある胡同が残っているものの、一部では再開発が進み、四合院や長屋などの住宅がすでに壊され、移転して住民がいなくなっている建物も少なくなく、再開発の波に飲み込まれようとしているようだ。
  必要な開発がされようとしているのか、この中で住民の権利を保護しているのか、公正・公平な手続きで行われているのか気にかかる。
  公共の利益にかなった再開発が、果たして行われようとしているのかも気になるところである。
  公共の利益とは何か。この概念を明らかにすることは難しい。公共の利益という場合、公平、法治、人権などの言葉が想起さ れるが、いずれも曖昧な概念である。これらの概念も、ある国の政治体制、法制度、経済の発展段階などによっても随分と異なるものになることは止むを得ない のだろうか。
  公共の利益の概念には、一部の特定の利益集団が政府の権力を乱用し、不当利得を得ることを阻止しようということがある。
  中国憲法13条は、私有財産を保護するが、公共的利益の必要性のために収用することがあることを規定している。これは、市民の土地の収用や住宅の移転に際しては、公共利益が衝突することがあることを認識したものである。
  それでも公共の利益を担保する上では、手続上の原則を守らなければならない。範は、この手続きは、(1)個人の権利を優 先する、(2)平等に協議する、(3)事前に公平な補償をする、(4)事後救済の権利を保障する、ことであると述べている(範進学『中国拳法実施与憲法方 法』上海三聯書店、2014年、220〜224頁)。
  宣武門の胡同の立ち退きで、この原則は守られているだろうか。立ち退きに反対、従わない住民もいるのだろうか。写真のような張り紙があちこちに見られる。
  中には、「早く承諾すれば(補償が)得られ、遅ければ約束できない。安置できる住居には(数の)限りがある。」というものもあった。地区の共産党委員会が貼っているものだが、これでは脅し文句ではないか。
  中国憲法第2条によれば、「中華人民共和国の一切の権力は人民にある。」はずなのだが。
  習近平は、第18期中央規律監察委員会第2回全体会議における講話で、「指導者の掌中にある権力は、党および人民に賦与 されたものであり、党と人民の監督を当然に受けなければならない。」と述べている。ただ、この講話では、党が人民より優先されており、そうであると、党の 指導は法律によって強制されないということになりそうだ。公共の利益という場合も、党の主張が最大多数の人の最大利益を代表する都いうことにもなりそうで ある。
  憲法は、国家権力を規制し、個人の権利を確保するものである。このように言うのは西側先進資本主義国だけであり、中国の政体には適応できないようである。

賑わいのある胡同だが。廃墟になっている箇所もある。
法に従って移転させる政策は不変だ。
共に新しい住居に行こう、危険で古い住居に別れを! 早く承諾すれば(補償が)得られ、遅ければ約束できない。安置できる住居には限りがある。

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