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Last Update:2015/03/11
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第279回 “走出去”戦略と在中国企業の悩み

China’s Outward Foreign Direct Investment Strategy and the burden of Foreign Firms in China

(2015年03月11日)

  商務部の発表(2015年1月19日)によると、2014年の対外投資学は1,160億ドルと前年比15.5%増え、外資導入額をわずかに35.6億ドル下回った。
  中国が今後も対外投資を増やすことは既定の方針であるが、内容をグレードアップする必要があると言われている。2015年1月29日の国務院会議の席上、李克強総理は、全方位の走出去グレードアップを図るように指示を出した。そして、重点分野として、以下の3分野が挙げられた(華夏時報 2015年2月2日)。
  第一に、(1)鉄道、原子力発電など重装置産業分野の国際市場を開拓し、合弁、国有・民間企業のジョイントによる投資運営方式、かつ国際協力により第三市場を開拓する。第二に、(2)鉄鋼、非鉄金属、建材、軽紡工業など業種を重点として、国産装置を利用する企業が国外でアップストリーム・ダウンストリームの生産ラインを建設することを支援する。第三に、(3)対外工事の請負、対外投資などを通じて、通信、電力、工作機械、船舶などプラント設備の輸出力を強める。
  これまでの対外投資分野は、(1)リース・商業分野が全体の30%強、(2)金融分野が20%弱、(3)鉱業分野、交通運輸・倉庫・郵便分野が、それぞれ15%前後で、全体の80%余を占めているので、中国政府としては、製造業分野の力を強化したいという意向の表明であると言える。
  国有二大鉄道車両メーカーである中国南車集団と中国北車集団が合併することになりそうである。今後、国内外の独占禁止法の審査を経て、新会社を設立する。両社の2013年度の売上高は合計で1951億元(約3兆7400億円)と、独シーメンスや仏アルストムをはるかにしのぎ、世界最大手としての地位を不動にする(日本経済新聞 2015年3月7日)。これも上述した走出去グレードアップ、重装置産業分野の国際市場を開拓の一環である。
  このような動きに対して、中国進出外資企業の負荷は高まっている。外資企業が、独占禁止法違反で調査され、多額の罰金を課されている。また、知的財産権侵害やノウハウ漏洩などの被害を受けている企業も少なくない。少なくないというより大半の企業がこれを経験していると言ってもいいのかも知れない。
  カーディーラーの経営が景気低迷の中で苦しさを増しており、メーカーとの対立姿勢を強めてきている。全国工商連合会自動車ディーラー商会は、自動車メーカーに対して、自動車の販売価格の逆ザヤ問題に対処するよう6カ条の公開状を提出した(中国経済網 2014年11月18日)。ディーラーは、今、独占禁止法による集団訴訟訴えの可能性を留保している。
  世界的にも支配的地位を占めることになる国内国有メーカーの合併は、積極的に推進しつつ、外資に対しては独占禁止法を手段とした取り締まりを強化しているのとは対照的である。これは、外資に対する挑戦であると捉えられなくもない。
  さらに、走出去グレードアップ戦略では述べられていないが、文化輸出も国策として強化されることになることだろう。



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