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Last Update:2015/03/25
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第280回 文化国家論を批判する

Criticize China’s Cultured Nation Theory

(2015年03月25日)

  習近平総書記が、国の文化パワーを強めようという文化国家論を全面に打ち出している。  
  第18期中央政治局第12回グループ学習会を主催した際の談話「国の文化的パワーを向上させる」(2013年12月30日)の中で、習は、“現代中国の価値観を広めることに取り組まなくてはならない。現代中国の価値観とはすなわち中国の特色ある社会主義の価値観であり、…中華民族の偉大な復興の実現を意味するものであ(る)。”(習近平『国政運営を語る』外文出版社、2014年、177頁)と述べている。
  中国の文化の概念、中華民族の偉大な復興という概念は分かりにくいが、習は、2012年11月29日に中国共産党第18回全国大会で総書記に選出され、会議閉幕の直後に中央政治局委員を従えて国家博物館で「復興の道」を参観した。中華民族の復興とは何かを考えたとき、すなわち中華文化の繁栄であるというのが習の考えのようである。
  中国文化とは、「中国人の突出した価値観は、集団的価値観であり個人的価値観ではなく、協力・統一を強調し、競争・分立を強調しない。」(中共中央対外連絡部研究室編『中共十八大 中国夢与世界』外文出版社、2013年、138頁)ということである。
  そうであるから、習は、西側諸国の基本的な政治制度である「三権分立」、「憲政」は中国の国情、中国人の文化的心理に合わないという。中国の国情および伝統にとって最も重要なことは何か。西側の民主とは違う中国式の民主を進めることであり、すなわち中国の特色のある社会主義政治である。
  文化国家は、直接、間接に民族に結び付けられた文化、すなわち民族的文化の高揚をその内在的要請とする国家概念であって、民族発展のための政治的イデオロギーをいうものである。習の意識形態(イデオロギー)が、この文化国家論に現れている。
  中国は、法治国家を確立するといっている。法治国家は、その歴史的性格からすれば、「非」法治国家としての威力国家、権力国家への対立概念として提起された(原田鋼『法治国家論』有斐閣、1990年)ものである。文化国家は、この法治国家に対立する権力国家の概念に含まれるものである。
  権力国家概念は、国家の新しき根本規範は憲法でなく、「指導者の意志」である(原田)。指導者国家の理論的整備は、三権分立原則の廃棄の上にのみ成就される(原田)。習が、文化国家論を打ち出し、三権分立は、中国の国情に合わないというのは、自身または共産党の支配を確固たるものにする基盤にするための手段である。
  国民の意志にはかかわりない。中国の一般市民は、共産党および政府の指導者の交代によって政策も走馬灯のようにいつも入れ替わること慣れっこになっているとしても、いつまでも恭順でいられるだろうか。



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