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Last Update:2015/04/08
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第281回 職人育成の重要性の再認識

Reaffirmation of the importance to foster craftsperson

(2015年04月08日)

  日本ピアノ調律師協会のある調律師・参与の方のお話を伺った。最近、中国ピアノ楽器協会調律師分会の役員(何れも大手メーカーの役員)と会うと、彼らの態度に変化を感じるという。この変化とは、日本を凌駕したと鼻高々であったのが、直近1年ほどは謙虚になっているということである。
  日本を凌駕したとはどういうことか、謙虚になったとはどういうことなのだろうか。
  日本を凌駕したとは、中国が世界のピアノ生産量および販売量で世界第1位になったということである。
  中国のピアノの生産および販売台数は、それぞれ年間約40万台程度(2013年は375,555台)ある。中国国産のグランドピアノは30万円前後、ヤマハのグランドピアノが50〜100万円、スタインウェイは200万円程度のものが売れ筋である。世界で最も高級ピアノを生産することで知られるスタインウェイは、中間層向けのピアノとして、アジアで「ボストン」と「エセックス」を製造している。中国では同社は著名なピアニスト、ラン・ラン(郎郎)氏と提携してブランドの知名度を普及させ、販売を伸ばしている。スタインウェイ社は 2011 年に二桁の成長率を達成したという。
  新品のほかに約8万台の中古ピアノの輸入があるという。この中古ピアノは大半が日本製で、中国の国産メーカーの新品よりも品質が良いので、売れている。
  中国人の所得水準が向上し、音楽を習う知識階層が増え、この中で世界第1位の生産・販売量を中国ピアノ楽器協会は誇っていた。ピアノを個人教授する街角教師の方が大学教授よりも収入が多いという話も聞く。
  ところが、この自信が揺らいでいる。このため、日本のメーカー技術者らと交流する際に、彼らが謙虚になっているという。
  なぜか。中国の協会幹部が、中央政府の幹部からプレッシャーを受けている。彼らが中央政府幹部から指摘されているのは、世界のトップ・ピアニストの誰一人として中国メーカーのコンサート・グランド・ピアノを使っていなということである。中国国内メーカーのピアノは、中国人ピアニストも使わない。これで一流と言えるかということである。
  中国は、今、世界における著名な中国ブランドを作ろうと必死である。つい最近までは世界で生産量が一番になったことに鼻高々であったが、最近になって生産量一位だけでは、必ずしも誇れないということに気づき始めた。
  中国では、コンサート・グランド・ピアノを生産する技術はまだない。日本のメーカーは、この技術を有する職人が中国の工場に指導に行っており、技術の伝承について決して秘密にしているわけではないが、中国ではこの技術を習得できる技術者がいないという。
  そこで、中国ピアノ楽器協会の役員らは、来日した際にしきりに日本から学びたいと謙虚な発言をするようになっているという。他の産業分野でも同様のことが見られるのではないだろうか。



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