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Last Update:2015/06/24
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第286回 農村の貧困対策と年収格差

Rural poverty program and Income gap

(2015年06月24日)

  2015年6月18日に貴州省で習近平国家主席が出席して、一部省市区の党委員会責任者座談会が開かれ、第13次5カ年計画期の貧農支援および経済社会発展に関する意見交換が行われた。この座談会で習近平は、13・5期に全面的に小康社会を実現し、2020年までに貧困をなくさなければならず、民生を改善し、共に豊かになることが、社会主義の本質的要求であると指摘した。
  5月27日に国家統計局は、2014年の全国都市非私営単位就業人員の年平均賃金を発表した。この発表によると2014年の正社員の年平均賃金は、5万7,346元と前年比9.5%増で、物価要素を控除して実質7.1%の伸びである。なお、この調査対象は、全国都市非私営単位158万社、就業者数は1.83億人であった。
  この調査は、どこまで中国の実態を表しているだろうか。党・政府が自らの成果を示す材料として、操作された統計ではないかという批判も出そうである。国家統計局人口・就業統計司の馮乃林司長も「平均賃金統計と個人の実感には大きな差がある。」と述べている。
  具体的に以下の2つの争点が代表的に指摘される問題である。
  第一に、調査対象が狭く、かつ偏っていることである。都市非私営単位158万社が対象であるが、非私営単位とは、公的機関、政府系の事業単位、国有企業である。このことは、中小の事業単位や企業ばかりか、農林漁業、金融業、公共管理・社会保障・社会組織(NGOなど)の業種を含まず、また、私営企業などの市場の多くの主体を含んでいない。
  第二に、平均地の取り方も極めて単純なようである。ある1人が1,000万元で、残りの9人が0元であっても、1人平均100万元として統計するということである。
  以上のような問題があるので、私営企業の従業員は、実感として捉えられないばかりか、公有企業が如何に優遇されているかといった不平等を感じることにもなる。公有企業は、単に賃金だけでなく、福利厚生・社会保険も遥かに充実・優遇されていることは周知の通りである。
  中国経済体制改革研究会の調査では、勤労者世帯の上位20%の2014年の年間所得は下位20%の約18倍に広がっているという(東京新聞 2015年4月7日)。これは、国家統計局発表の年平均賃金と比較できるものではないが、むしろ一般市民の所得格差に対する実感を表す数字になっているかと思われる。同研究会は、「社会矛盾を引き起こす抗議行動は多発している」と指摘しているそうで、政府系シンクタンクの立場からしても、対策が急務であるという認識を示しているものであろう。
  13・5期に全面的に小康社会を実現し、2020年までに貧困をなくし、民生を改善し、共に豊かになるためにすることは、地域間、業種間の格差をなくすことも不可欠である。地域や業種によっては、平等な発展機会(チャンス)が与えられていなかった。このために格差が拡大しているという事実がある。平等な発展機会を与える政策が求められる。  


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