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Last Update:2015/08/05
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第289回 株価急落:真の恐れは対外威信の失墜

Chinese Shares Tumble:Xi Jinping’s Fear is in loss of external prestige

(2015年08月05日)

  中国の株価急落問題が、毎日のようにニュースで取り上げられている。個人投資家による政府の対応への不満が嵩じていることも報道されている。さらに、中国証券市場の急激な下落が、世界の株式市場を引き下げる要因にもなっているので、世界経済にとっても他人事ではない。
  外国メディアは、この株価急落に直面して習近平政権は、株式市場の混乱によって、個人投資家の不満が高まり、デモなど社会不安につながりかねないという恐れから、相次いで株価対策を講じているという説明振りをしている。
  習近平政権は、「株式市場の問題の政治化を避け、批判の矛先が政府や党に向かうことを防げ」という通達を出したと伝えられている(日本経済新聞 2015年7月12日)。
  中国の証券市場の売買の8割が個人によって占められているという事情もあるだろうか。個人投資家を上手くなだめなければ、デモなど社会不安につながりかねないという懸念も若干はある。しかし、8割の個人といっても、売買をしている個人は全人口の2〜3%でしかない。威権政治を進める習近平が、この個人投資家を抑えることはたやすい。人権派弁護士250人ほどを何の根拠もなく拘束するくらいであるから。
  習近平政権が恐れているのは、個人投資家の不満の高まりやデモ発生のリスクなどではなく、第一に、(1)今回の混乱が長引けば、習近平自身の対外的権威が失墜し、第二に、(2)先進資本主義諸国および外国投資家が中国の金融システムが未整備であるという評価をし、外国の投資家が中国市場を敬遠するようになることである。
  実際に金融改革の遅れに対する懸念の声が出ている。株価急落で株式の売買停止が相次ぎ、中国株に投資するファンドが顧客からの解約請求に応じきれなくなった。グローバルな投資家はこうした仕組みへの批判を強めており、国際的な株価指数であるMSCIへの中国株の採用が遅れる可能性が高まっていると言う(日本経済新聞 2015年7月15日)。
  外国(政府および企業)が習近平の手腕に対して疑問を持つようになるとすれば、習近平自らの権威が揺らぐことになる。習近平の最も嫌うことだ。“一帯一路”戦略、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立で権威付けをしているところ、マイナス・イメージになるからである。
  しかし、現時点における株価を支えようとする措置は、中国が人民元の為替介入を控えるなど市場経済への移行をさらに促進するという対外的公約に反するものであり、それだけに国際金融市場では中国政府の株式市場への露骨な介入に批判が高まっていると言う(日本経済新聞 2015年7月15日)。
  習近平の進める“一帯一路”戦略も戦略の実行性そのものより、“一帯一路”戦略を通じて人民元の国際化をより速く促進し、中国が経済大国としての地位をさらに強化し、国際的発言力をさらに強化しようというところに狙いがある。そして、この形成基準には、いずれも習近平自身の国際舞台における指導者としての地位・発言力を誇示したいがためということがある。


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