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LastupDate:2004/11/10
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チャイナウォール
コラム、『チャイナウォール』−中国人の法意識−
第29回 村長選挙で変わる住民の政治参加意識
(2004年11月10日執筆)
1 村長選挙に予備選の復活
中国全国人民代表大会は、地方人民代表大会が実施する直接選挙の運用を改善するため、1995年以来の選挙法改正に着手した。候補者選びの透明性確保に向けた「予備選挙」の復活や、買収などへの明確な処罰規定の追加などを検討する。末端の民主化の試みを強化する狙いであるという(日本経済新聞 2004年10月31日)。
予備選に関しては、県レベル以下の人代選挙に限り実施している直接選挙でこの導入を図るというものである。現在のシステムでは、立候補者数が定数の2倍程度を超えた場合、「有権者小組」と呼ばれる組織が事前に話し合い候補者を絞り込むことになっており「透明性を欠いている」との批判が強まっていた。そこで、選挙法改正案は候補者絞り込みのため、有権者小組にかわり一般の住民による予備選を認めたという。
2 浙江省安吉県山川郷の「三推両決」
実は、このような予備選の例が既に見られる(華東新聞 2004年11月2日)。浙江省安吉県山川郷では、「三推両決」という村長選挙が10月に実施されている。「三推両決」とは、次のような仕組みである。
(1) 三推
第一段階は、(1)「公推」であり、10月12日に安吉県の171名の科長級以上の幹部が93名の候補者を推薦した。第二段階は、(2)「群推」であり、10月15日に山川郷の村の責任者、行政幹部、企業責任者、党代表、人民代表大会代表、政治協商委員会委員ら94名が参加した「群推大会」が開かれ、無記名投票で18人の候補者が選出され、その後、議論を経て、さらにこの中から5人に候補者に絞られた。第三段階は、(3)「優推」であり、10月18日に県委員会の投票で候補者を3人に絞った。
以上までの過程を「三推」という。
(2) 両決 この「三推」の後、3人の候補者が3日間の選挙活動を行なう。その後、(1)10月24日に全郷4,682人の有権者が投票し、2名の村長候補者を選出した。そして、(2)当日のうちに2名の候補者が公開演説をし、郷代表が最終的に村長を選出する。
この2つのステップを「両決」という。
3 民主化とは何か?
ジェームズ・サッサー駐中国米国大使は、以前、ロサンゼルス・タイムズのインタビューに、「中国の政治的自由、民主化は、欧米のモデルとは異なるが、進展している。農村における選挙が、この体現であり、将来はより高いレベルでも行なわれるようになるだろう」と述べている。
民主主義の原理は、市民権の原理であり、これは具体的には多数決主義、首長の選挙(これが行なわれること自体が民主であるとは言えず、手続上の最低条件として、秘密投票、普通選挙が行われることが必要であるが)などで実現されるものである。
中国の政治・社会体制においてこれを考えれば、共産党の強制力や権威主義による支配に対し、共産党に批判的な自由な発言をする機会が与えられ、この中で市民による普通選挙が実施され、その結果(たとえ共産党員が選挙の結果選出されなくとも)を共産党も認容することであろう。
浙江省安吉県山川郷の例に見られるとおり、中国で徐々にこのような民主化が進展しつつある。
次号の更新は
11月24日(水)
ころを予定しています。
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