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LastupDate:2004/9/22
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コラム、『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第24回 秀水文化の混迷(その1)

――文化、街づくり、ニセモノ、個体戸 v. 大企業、利権 etc.

(2004年9月22日執筆)



    はじめに
  北京建国門外の外交官アパートの付近に秀水街(Silk Alley)という通りがある。ここは、主にシルクの服装を扱う商店(個体戸)がひしめき合って、軒を並べる市場となっている。1985年に北京市朝陽区政府が認可したものである。今では、多くの外国人観光客も訪れ、ポピュラーなアウトドア市場として人気があり、「秀水文化」ともいわれるものが形成されている。
  筆者は、1989年から1992年の間、北京に駐在した経験がある。このときによく訪れた思い出がある。初めて中国・北京に行った妻が、アパートに落ち着いた後、同じアパートに住む奥さん方に連れて行かれたところも秀水街だった。
  この秀水街が大きく変わろうとしている。秀水街は、前述の通り個体戸が軒を並べ、これも多くがテント程度の店構えのアウトドア市場である。今、この個体戸を撤去し、その後に大規模の現代的モールに建替えようという計画(プロジェクト)が進行している。現代的モール建設計画には、少なからぬ反対意見もある。


<秀水市場の入り口。小さなテナント・個体戸がひしめき合う。>


現代的モール建設計画の内には、複雑な権利関係があり、さまざまな課題がある。そこで、以下では、(1)秀水街とはどのようなところかといった現状を紹介し、(2)秀水街の持つ課題を明らかにし、(3)現代的モール建設計画の概要を紹介し、(4)当該計画(プロジェクト)に存在する課題を明らかにし、(5)利害関係者(ステークホルダー)の権利問題について検討する。 秀水街の現在を見ていると、文化とは何か、街づくりのあり方はどうあるべきか、ニセモノ市場の実態、個体戸の活力と悲哀、闇経済の姿、大企業の利権構造など、さまざまな問題が見えてくる。

1 秀水街(Silk Alley)とは
   秀水街は、延長約500メートルの街道である。この秀水街には、年間200万人を超える買い物客が訪れ、年間売上げは1億元(1,200万ドル)にのぼる。約420の個体戸がある。このうち70%以上は、安徽省など農村からの出稼ぎ労働者がテナントを賃借し、経営している。 秀水街が知られるようになったのは、前述の通り1980年代後半からである。安いシルク製品が小さな個体戸によって商われ、徐々に個体戸の数が増え、外交官アパートや大使館の集積地区に隣接しているため、外国人駐在員や観光客で賑わったことによる。外国人個人が買い物を楽しむほかに、ロシアなどからは大量に買付けにくるグロープが多く見かけられた。
  秀水街のもう一つの顔は、ニセモノ市場であるということである。筆者は、9月12日(土)に地下鉄で秀水街に行った。地下鉄の「永安里」駅を降りると、すぐそこが秀水街の入り口である。地下鉄を降りたところ、ある女性が携帯電話で待ち合わせの約束をしているのが耳に入ってきた。「秀水街、あのニセモノを売っているところよ。そこで待っているから。」と。今、秀水街で扱われている商品は、シルク製品ばかりではなく、さまざまな素材を使った服装がほとんどなんでもある。また、衣類だけでなく、バッグ、靴(革靴やスポーツ・シューズ)、腕時計などの装飾品など各種の身の回り品も販売されている。国家工商行政管理局の調査では、ルイヴィトン、プラダ、シャネル、フェンディ、ポロなど25の国際的な著名ブランドのニセモノ商品が見つかっている。
  では、このニセモノはどこから来るのか。個体戸(vender)の売り子と売れ筋商品をチェックし、搬入数量をメモしている女性がいた。個体戸の後ろには、大量のニセモノ・メーカーまたは卸がいることは疑うべくもない。



次号の更新は9月29日(水)ころを予定しています。

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