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Last Update:2015/12/28
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第298回 双12:もう1つの巨大な電子商取引

Double 12:Another Huge E-commerce

(2015年12月28日)

  「双11」が日本では有名だが、もう1つの巨大な電子商取引に「双12」がある。毎年12月12日に行われるアリババが始めたイ ベントであり、中堅・中小企業店の商品をネットや特設店舗などのツールを駆使して販売することを支援しようとするものである。
  2015年12月12日には2,800万人が参加し、新しく1,950万の店舗会員が加盟し、出店数は2倍になった。 清華大学の柴躍廷教授によると、これも電子商取引の勝利であり、さらに電子商取引の発展を促すことになる。2020年頃までに電子商取引は店舗販売市場規 模を上回り、流通および消費の主流になると予測される(経済日報 2015年12月21日)。
  しかし、電子商取引の発展を促す上で大きな問題も存在する。それは、偽物商品、不良品が非常に多いということである。
  電子商務交易技術国家工程実験室の調査では、2015年の全国の「双11」の販売額は1,200億元であったが、そのう ち35%が注文キャンセルや返品になっており、有効な取引額は800億元余である。2015年の社会消費品小売総額は30兆と見込まれるところ、800億 元という金額はおよそ1日の社会消費品小売額に相当することになる。
  電子商取引を規律しようと「インターネット取引プラットフォーム経営者の社会的責任ガイドライン」(網絡交易平台経営 者履行社会責任指引)が発布されているが、大きなサイトでは10万から100万の事業主が出店しているので、これを審査・監査することはほとんど不可能で あるというのが現実である。このため、ネット取引は、無法地帯になっているとの指摘もある。
  柴は、「政府と市場の責任と義務を合理的に配分し、社会の各部門が協働・協調するべきである。政府の関係部門、企業、 消費者がともに参画し、電子商取引市場のガバナンスについて共同することが必要である。これにより不法、偽物、劣悪な情報や行為を取り締まることができ る。」と提案している。
  しかし、これはなかなか容易なことではないだろう。柴の提案の詳細は分からないが、社会主義計画経済の枠組みで規律し ようとしているようである。しかし、このような取り組みでは、市場による監督メカニズムは必ずしも有効に機能しない。もっと市場に委ねることで、市民によ る本当の監督・管理機能が働くようになる。市民も、市場および商品に対する監督・管理は政府の責務であるとし、政府に委ねていれば安心だという観念から脱 却し、主体としての意識をもっと強く持たなければならないだろう。PM2.5に代表される空気汚染など環境問題においても、市民が最大の被害者でありなが ら、政府に対策を講じるように求めはするものの大きな運動にはならず、依然として政府に従順である。運動をしない市民、運動をさせない政府。ここに問題の 所在がある。


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