コラムに関する感想
お問い合わせ
LastupDate:2004/11/24
トップチャイナウォール
コラム、『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第30回 消費者の疑心暗鬼か権利意識の現われか
――コダック・デジカメの使用説明書事件

(2004年11月24日執筆)


1 事件の概要

   北京市第一中級人民法院(以下、「法院」という。)は、2004年5月に一人の消費者とコダック・デジカメの販売代理店である北京富誠佳信科技公司との間の消費者紛争にかかわる事件を審理し、判決を下した(北京法院網 http://bjgy.chinacourt.org/)。
   この事件の経緯は、次のとおりである。
   2004年4月7日に楊某(原告、以下「X」という。)は、北京富誠佳信科技公司(被告、以下「Y1」という。)でコダック電子(上海)有限公司製のデジカメを2,050元で購入した。ところがこのデジカメの使用説明書は、同梱されているCD-ROMに記載され、ハードコピーは存在しなかった。Xは、パソコンを所持していなかったので、この使用説明書を読むことができなかった。そこで、Yに中国語で印刷されている使用説明書を要求したが、YはCD-ROMの使用説明書しかないと回答した。5月17日にXは、コダック(上海)公司(被告、以下「Y2」という。)まで出向き、CD-ROM内の使用説明をプリント・アウトしてもらった。しかし、この説明書は、Xによれば国の関係法規に適合しておらず、製品の性能や使用方法も良く分からないものであったという。
  そこで、Xは、Y1とY2を相手取って、法院に訴えを提起した。訴えの内容は、(1)Y1は、資料の調査費として30元を支払え、(2)Y2は経済損失1,500元を支払い、謝罪をし、これを公開せよ、というものであった。
  法院は、(1)XのY1に対する請求は認容したが、(2)Y2に対する請求については、Y2の使用説明書は、製品品質法および製品表示規定に基づき適法であり、Xの請求理由はなく、これを棄却するとの判決を下した。
  この判決に納得しないXは、北京市質量技術監督局の消費者センターに訴えでた。当該センターは、法院の判決同様にY2の使用説明書が製品品質法などの関係規定に反することはないと判断した。しかし、消費者の便益を考え、当該センターはコダックの北京事務所にパソコンをもっていない消費者にも配慮し、中国語による詳細な使用説明書の印刷物を備えるべきであると通知したという。

2 消費者の疑心暗鬼か権利意識の現われか

   さて、この事例を引き合いに出すのが適当であったか否かは分からないが、中国人の疑心暗鬼の強さが窺えるような気がする。2001年に北京発アメリカ行きの日本航空JAL782便が、日本上空の大雪のために関西空港に臨時着陸した時に、中国人旅行者のみが査証の関係ですみやかにトランジットの手続が行えず、食事や飲料の提供も行われなかったことから、民族差別であるとの訴えが提起されたことも、多分に誤解があるとはいえ、中国人の疑心暗鬼の強さがこれを増徴したのではないか。
  また、日本に比べてアメリカ型の想像を絶する訴訟社会なのではないかという気もする。日本企業としては、中国で訴訟に巻き込まれないような予防法務を心がけておくことも肝要である。



次号の更新は12月08日(水)ころを予定しています。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002 GLOVA-China Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はGLOVA-Chinaの商標です。