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LastupDate:2005/1/12
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チャイナウォール
コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−
第33回 2004年の法律重大事件から見る中国の世相
(2005年1月12日執筆)
法制日報で2004年の法律にかかわる典型的な重大事件が発表されている。この事件から、中国の民主と法制にかかわる新しい事象、世相が判断できる。
以下、法制日報で紹介されている事件を分類整理し、今日の中国が抱える問題について考えてみたい。
第一に、今日の中国で最も多い犯罪は、市場経済化の進展に伴う経済犯罪であるといえる。
中でもニセモノの製造販売が後を絶たない。世界のニセモノの35%程度が中国で製造されているといわれ、日本企業の工業製品の模倣品被害は、対中輸出と現地生産の総売上の20〜25%程度と思われ、被害額は年間6,800億円〜8,500億円に及ぶと推測されている。2004年に中国で最大の関心を呼んだのは、こうした工業製品のニセモノではないが、「西安の偽スポーツくじ事件」と「温州のニセ領収書事件」がある。西安の事件は、担当の団体職員がニセくじを製造したもので、温州ではニセ領収書の製造・販売で最高1,000億元以上の脱税をした企業があるという。
同じく経済犯罪に、「証券取引所の上場審査委員会の名簿売買事件」(審査員名簿が230万元で売買)、「ねずみ講」(全国11省、10余万人が被害にあい、被害額は3億元にのぼる過去最大のねずみ講事件)、「南京の密輸事件」(海産物4.6億元)がある。
市場が拡大する中で、不法にでも利益を得ようとする傾向は、ニセモノ製品を作るだけにとどまらない。不良品でもかまわずに売ってしまおう、更には生産してしまうという経営者も少なくない。「不良粉ミルクによる嬰児死亡事件」が法制日報で取り上げられているが、同様の事件を上げればきりがない。市場の秩序を如何に維持するかは、今後の中国の大きな課題である。
また、行政官や警察官が職権を乱用した収賄事件も相変わらず多い。
第二に、刑事事件の規模も大きくなっている。これには、「銃刀不法所持事件」(11人を検挙。不法製造、売買が増加)、「ヘロイン密輸事件」(中国のヘロイン中毒者は100万人近くに)、「インターネットを利用した猥褻物頒布・販売事件」(中国は8,000万人のインターネット人口がいるが、うち70%が30歳以下。)がある。 犯罪も過激化し、過去には考えられない事件も起こっているようだ。例えば、「雲南大学内の学生による学内故殺事件」がそれである。学校教育のあり方に対する問題を指摘する声も上がってきている。
第三に、民主と法制という観点からの新しい法制や市民の権利意識の高まりを感じさせる動きもある。
一つが、道路交通法の改正(2004年5月1日に新道路交通法施行)である。中国では車優先社会ではないかとも思われることがあるが、新道路交通法の施行で、運転者に無過失責任を負わせることとなり、従来のような過失相殺が認められなくなった。この改正の適否については、多く議論が出ているところであるが、人命尊重の姿勢が窺われる。
権利意識の高まりということでは、「B型肝炎保菌者の公務員資格取消事件」が典型的な事件である。これはB型肝炎保菌者である張が、地方公務員試験を受け、一番の成績で合格したが、健康診断の際にB型肝炎の保菌者であることが判明したことから、合格が取り消された。そこで張が、中国には1.2億人の保菌者がおり、これは国の衛生管理が不備であることの結果であり、かつ合格取消という扱いは差別意識に基づくものであると主張し、この主張が裁判で認容されたものである。張は、勝訴判決を得た後、浙江省、四川省、福建省、広東省などの公務員規定にあるB型肝炎保菌者の採用禁止規定の改正および国家公務員の健康基準の改正を要求し、これが認められるところとなった。張は、中央宣伝部、司法部および中央テレビ局が選ぶ2004年度の中国十大法治人物となった。
次号の更新は
1月26日(水)
ころを予定しています。
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