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(2005年6月22日執筆)
米ワシントン・ポスト紙が、河北省定州市で6月11日未明に、発電所建設のための土地収用めぐり、立退きを拒否する地元農民が数百人のグループにより襲撃されたと報じた(共同)。村民7名が死亡し、50弱が負傷したという。この事件は、日本のテレビでも襲撃を受けた農民が撮影した映像が流されていた。 当該農村では2003年、国家プロジェクトの河北国華定州発電所の建設のため農地収用が行われた。補償金が安かったため、農民側は土地収用補償金の標準価格の支払いを希望したが聞き入れられず、小屋を立てて抗議。工事の施工は進まず、双方のにらみ合いが続いていたところ、6月11日に土地収用側とみられる200〜300人がヘルメットをかぶり迷彩服を着て、こん棒、カマ、消火器、押し車などで、収用に反対する農民を約1時間余りにわたり襲撃したという(毎日新聞)。 北京の「新京報」の報道では、河北省党委員会は13日に定州市の和風・党委書記と郭振光市長の免職を決定した。 青島市では、4月に「民間紛争の激化する事件にかかわる関係単位および人員の責任追及弁法」が制定、施行された。河北省の事件が、決して特異なものではないのではないかと想像される。 青島市の弁法は、民間紛争が、(1)故殺、傷害、毒物投与、銃火器および爆薬使用といった悪辣事件、(2)自殺、(3)集団武装殺傷事件など激化し、大衆に著しい悪影響を及ぼしていることに対応しようとするものである。 民間紛争がこの様に過激化している原因の一つとして、党、政府、大衆機関、社会団体などが何れも十分な紛争調停機能を果たしていないということが指摘されている。事件を調査究明すべき機関が十分な究明責任を果たさず、紛争の調停にも熱心ではなく、各紛争調停関係機関の連絡体制も整わず、大衆の相談(来信来訪)も拒絶する状態があるという。 そこで、第一に、民間紛争について真剣に紛争原因の究明および調停に関して、紛争を解決するシステムを再構築する必要があると考えられる。市、区の社会治安総合治理委員会が公安、司法機関、民政などの各部門に事件究明責任を課し、責任の所在を明らかにする。第二に、民間紛争の責任追及、懲罰メカニズムを機能させることである。党、政府、紀律検査委員会、人事部門および市、区の社会治安総合治理委員会が公正な処罰を行うようにする。 青島市の弁法は、以上のようなものだが、そもそもなぜ民間紛争が増加し、激化するのか。富裕な党・政などに対して、貧窮する農民がいるという所得格差の問題がある。この所得格差の発生は、公正な機会の中から生まれたものではなく、権限を利用した不正行為があるのではないか。大衆との紛争当事者が政府などである場合が少なくないところ、今、根源的問題解決努力が求められているといえる。
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