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――日本に対しては敵愾心になるのか
(2005年4月13日執筆)
中国における外資企業のウェイトが高まっている。中国のWTO加盟による市場開放の要請、約束に基づき、市場の透明度を高め、公平な競争を促進する必要があるところ、外国企業の市場参入のための法整備も進展しつつあるところ、当然の傾向といえる。 中国進出外資の生産額は、中国GDPの40%、輸出総額の56%にのぼる。商務部の「2004年の中国における多国籍企業報告」によれば、多国籍企業の中国生産品の中国市場占有率は3分の1になっている。コダックは、2003年に中国国有の写真フィルム・メーカーである楽凱の株式20%を買収。インテルは、中国のCPU市場の85%を占めている。スーパーは、外資系企業の市場占有率が80%になる。 GM、フォルクスワーゲン、フォード、トヨタなど外国のカー・メーカーは、中国自動車産業の成長率が、2004年に15%も減少したにもかかわらず、今後5年間に120億ドルもの投資を計画しているという。外国部品メーカーもすでに800社が中国に揃っている。 こうした中、中国には、自国経済が外資により操作されることにならないかとの警戒感が根強くある。そこで、中国はWTOに加盟したといっても、市場の開放、市場経済システムへの移行、自由競争の導入には慎重であり、徐々に行うといっている。例えば、国家広播電影電視総局は、「中外合資・合弁テレビ番組制作経営企業管理暫定規定(44号令)実施に関する関連事項の通知」を発表した。この通知によると、(1)外資系企業が中国に設立できる映画・テレビ番組会社は1社しか認められず、(2)「テレビ放送番組製作経営許可証」や「テレビドラマ製作許可証(甲種)」を持つ中国側企業も3年を経ないと合弁企業設立を申請できず、(3)合弁企業は中国国内のラジオ局やテレビ局の周波数・チャンネル経営業務に参画してはならないとしている。 また、外国企業に不正があることの宣伝(?)も少なくない。国家税務総局は、2004年末の国家税収2兆5,000億元であるところ、外国企業の脱税は1,000億元にのぼるとの予測数字を発表している。 もっともこうした外資に対する警戒感は、日本でも外資によるM&A規制強化の動きがあり、外資による放送業界への間接出資規制強化の動きがあるので、中国市場が開放されておらず、市場の透明性、公平性が確保されていないと直ちには非難できないであろうが。 ただ、外資に対する警戒感が、日本に対して時には敵愾心として発現されることが気がかりである。日本企業の対中事業展開上の日本に特有のリスクといえる。中国市場参入戦略を策定する際には、さまざまなセーフティ・ネットを構築し、多方面からのリスク・マネジメントを検討しておく必要があるといえる。
次号の更新は4月27日(水)ころを予定しています。
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