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LastupDate:2005/8/24
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第48回 中国人の犯罪意識――海外不法就労

(2005年8月24日執筆)

   英国が中国人のグループ・ツアーに門戸を開放した。このことは、蛇頭に新たなビジネスを提供することになるという(Michael Sheridan, 英The Times紙記者)。
   中国人が英国に観光旅行に行こうとするとき、個人の資格では認められず、グループ・ツアーに参加し、かつ、このときに確かな身元―中国の会社の間違いない身分を有していることなど―があることが求められる(日本も同様)。観光を、間違いなく中国に帰国することを担保するためである。
   しかし、蛇頭は、いくらでも架空の会社の身分証明書を作り出し、英国の入国審査官を誤魔化せるという。
   中国政府も不法な出国を管理すべく身分照会体制は整えているが、蛇頭が名義上の会社を設立し、電話回線を引いて応対するくらいは、とりわけ私営企業の設立が容易になった今日では、いとも簡単であるし、中国政府の人員数で全てのパスポート申請者の身分照会をすることも物理的に不可能である。外国政府領事館では、このような管理はより困難だ。 それでもなお、北京でビザ申請者の50%が、上海では同90%が却下されているというが。
   Michael Sheridanは、不法出国を手引きし、このために北京で2年間の禁固刑に服した蛇頭のWang Huarenにインタビューをしている(The Times, Aug.7.2005)。Wangは、逮捕されていなければ、この2年間に日本に250人、英国を中心としたヨーロッパに200人を不法出国させる計画であったという。
   Wangに罪の意識はない。貧農が、国外で富を築き、家族に仕送りするためにコンテナ船などに隠れたりして出国、外国に密入国するという方法ではないからだ。彼のクライアントは、教師など中間所得層だという。こうしたクライアントも英国などでは家族のために働くという。ほぼ何れのクライアントも、すでに英国には何らかのツテがあり、さまざまな労働の場を提供する組織が形成されているという。
   不法入国し、警察に逮捕された中国人に警察官が反省の弁があるかと促しても、蛇頭のWang同様に彼らにも罪の意識はないようだ。不法就労者は、「家族のために働くことのどこが悪いのだ」という。強制送還する際にも、もう二度と密入国はしませんとは言わず、「チャンスがあればまた密入国し、稼ぎたい」といって帰るそうだ。
   罪に対する判断基準は、日本人とは随分と違う。



夜のロンドン・チャイナタウン(倫敦華僑)


チャイナタウンにある「華人社区中心」



次号の更新は9月14日(水)ころを予定しています。

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