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(2005年8月10日執筆)
先ごろ、中国石油(CNOOC)は、米ユノカルの買収を米議会の反対により断念した。しかし、中国企業の海外進出意欲は衰えることはなく、海外企業の買収は今後も続きそうだ。 中国のWTO後、中国企業の海外進出が著しく増えてきている。この現象を中国語で「走出去」という。 英通信設備会社Marconiに中国Huawei(華為)社が買収話を持ちかけた。この買収が成功することになれば、中国企業による海外企業買収としては、最も重要なものとなろう。数千人の従業員を抱えるMarconi社が買収され、失業者が輩出されることにでもなれば、米ユノカルの場合と同様に英中の政治論争にも発展する可能性がある。 Huawei社は、深センに本社を置き、全国に50の支店を持ち、2万2,000人の従業員を抱える大企業である。今週にも両社による買収協議が行われる予定であるという。 Marconi社の経営悪化の原因は、英BTへの設備供給価格を削減できず、この点で他社とのコスト競争に負けたことにあった。一方、Huawei社は、BTとの取引もあり、製品の品質でも比較的に高い評価を得ており、価格競争力の面でも優位さを発揮している。 Huawei社は、ここ1〜2年の間にそのブランドが知られるようになったとはいえ、まだヨーロッパでは知名度が高いとはいえない。しかし、英国”The Times”紙の論評(2005年8月7日)では、Huawei社は、Marconi社にとって最も望ましい買収者であると評されている。通信設備は供給過剰産業になりつつある。この産業分野の中で中国企業が大きなウェイトを占めるようになりつつあるようだ。 Marconi社をHuawei社が買収するというニュースが伝えられた同じ日に、南京汽車と英MG Midget社が、英MG Midget社のGBスポーツカーを共同生産する契約に近く調印するとの観測が伝えられた。MG社が、運転資金不足にあることが共同生産をする理由の1つである。ここに名乗りを上げたのが南京汽車であった。 以上のように中国企業の海外進出は、急速に増えている。ただ、Huawei社に強い拒否反応がないのは、同社が中国政府からは独立した、純粋な民間企業であると考えられていることにある。そうであるから、資本市場、証券市場が発達した英国では、公平な企業行為として受け取られているといえる。
次号の更新は8月24日(水)ころを予定しています。
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